腸管壊死・虚血のCT所見は,1)造影CTで壁が造影されないまたは造影効果が弱い,2)単純CTで壁が高濃度(出血性壊死),3)遊離ガス,4)SMVまたは門脈内ガス,5)壁内気腫(intramural gas),6)壁肥厚,7)大量の腹水,8)隣接する腹膜,腸間膜や後腹膜筋膜の充血・肥厚.1,2と5が特異性が高い.下記症例ER16〜20を参照. 絞扼性小腸閉塞のCT所見は,1)腸管壊死の所見,2)閉鎖ループ(closed loop:腸管のloopが隣接する2点で締め付けられている状態で,近くに虚脱した2つの小腸,または虚脱した1つの小腸と単純閉塞の小腸の始点がある:図A),3)腹水,4)腸間膜の浮腫(濃度上昇),5)腸間膜血管の走行異常と静脈の怒脹,6)壁肥厚,7)gasless:腸管内にガスがないかあっても少量(断面面積の半分以下を目安)の7所見である.1と2が特異性が高いが,3〜7のうち3つ以上の所見があれば絞扼性小腸閉塞の可能性はかなり高い.
図1で上行結腸(AC)と下行結腸(DC)は虚脱しているので拡張した腸管は小腸であり,小腸閉塞である.ガストログラフィンで造影されている小腸は単純閉塞の小腸であるから,造影されない拡張した小腸があれば,それは絞扼された小腸である可能性が高い.さらに,図11〜図13の腹水(※)と,図8と図9の腸間膜の浮腫(▲)も絞扼性小腸閉塞を示唆する所見である.図5と図6でbeak signを呈して(↑)拡張し始める小腸1と2があり,追跡すると図10でUターンし,図8の9で閉塞する.図7で虚脱した小腸(SB:回腸末端)を認め,図4の丸数字1,図3の丸数字2,図2の丸数字3,図3の丸数字4→図1の丸数字6が単純閉塞の小腸であり,図5の1〜図8の9は絞扼された,closed loopを形成した小腸である.その腸管壁は良好に造影され壊死はないと解釈する.S:S状結腸.下記参照症例EE16で言及したようにガストログラフィン投与後(1時間後では単純閉塞腸管の造影が不十分で,2,3時間後が適切)のCTは絞扼性小腸閉塞の診断に極めて有用である.イレウスチューブを挿入したにもかかわらず翌日腹痛が改善しないので手術になった.S状結腸と盲腸が癒着し間隙を形成し,そこへ15cm長の回腸末端が嵌入し絞扼されていたが,壊死を認めず癒着剥離だけを行った.虫垂切除,婦人科手術や直腸・S状結腸の手術後に絞扼性小腸閉塞が起こると,絞扼された腸管は骨盤腔内に位置する場合が圧倒的に多い.
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