下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 7 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 34】

横行結腸癌による腸重積.intussusception with T-colon cancer



腸管拡張はないが図8と図9で下行結腸(DC)は虚脱し,上行結腸(AC)と図4と図5の横行結腸(TC)は糞便で充満している.図4で浮腫性に壁肥厚した腸管(△)内へ虚脱した腸管(▲)が嵌入する様子が長軸方向に描写されている.脂肪組織(↑:腸間膜)を伴い腸重積である.図5で外側の,造影効果のある1が外筒,浮腫性に壁肥厚した2が中筒で,3が虚脱した内筒である.※のガス像は壁内気腫ではなく,外筒と中筒間に残存したガスである.図6の白矢印が重積の原因病変と思われるが,周囲からの圧迫により虚血状態になるため浮腫性になったり,または出血による血腫像を呈することもあり,性状はかなり変化することが多いので悪性腫瘍であるとの診断はできない.左上の図Aは内視鏡所見で,表面不整な隆起性病変が原因の重積であった.手術および病理所見:横行結腸癌による腸重積.Mucinous adenocarcinoma.






文献考察:成人腸重積本邦集計153例
1)中神克尚, 高橋泰, 杉谷一宏, 佐々木毅, 大和田進, 森下靖雄 病悩期間が17年であった回腸脂肪腫による成人腸重積症の1例 日本臨床外科学会雑誌61巻11号 Page2984-2987(2000.11)
要旨:1998年までの10年間の成人腸重積の本邦集計例153例中原因疾患は腫瘍によるものが118例(77%)で,うち悪性腫瘍は65例(42%),良性腫瘍は53例(35%),特発性13例(8%),その他16例であった.男性は81例(53%),女性72例(47%),60歳以上が46%を占めた.

文献考察:大腸癌による腸重積本邦集計73例
2)竹並和之(北本共済病院), 吉井克己, 松村直樹 横行結腸癌による成人腸重積症の1例 日本消化器外科学会雑誌36巻3号 Page229-233(2003.03)
要旨:2002年までの過去12年間の大腸癌による腸重積本邦集計例は73例で,男:女=25:48,癌病変の部位はS状結腸46.6%,盲腸32.9%,横行結腸10.9%,上行結腸5.5%,下行結腸2.7%,直腸1.4%である.

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