上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ22 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 109】

胃癌穿孔.Perforated gastric cancer








図1で△は腸管外に漏出した造影剤であり,↑間の胃小弯は開大し,伸展性に乏しく悪性腫瘍を示唆する.▲は胃角部の潰瘍で,↑間の胃癌の穿孔の可能性が高い.図3〜図5,図7〜図14の白矢印は遊離ガスで,図8と図9の▲は壁欠損像を示している.図7〜図13で胃体部から前庭部前壁が壁肥厚を呈している(↑)が,軽度の造影効果を示し粘膜下浮腫ではなく,腫瘍性病変を考慮すべきである.従って,胃癌の穿孔と診断する.十二指腸潰瘍の既往があること,図1で△は十二指腸から露出したものと解釈され,遊離腹腔内に広がらない,腹水を認めないことで保存的に治療された.結果的には胃癌の穿孔であるにもかかわらず症状は改善し,2週間後の内視鏡検査と生検でBorr.3型の胃癌と診断された.図Aが切除標本で,↑が癌病変.












参考症例(胃癌穿孔):61歳男性.2年前ヘリコバクター陽性の胃潰瘍と診断され,除菌治療を行ったが途中で自己中断した.1週間前に上腹部痛が出現し,当日になって痛みが急に増強したので来院した.体温:37.7℃,腹部は心窩部に圧痛があるのみ.
図4と図5の白矢印は遊離ガスで,胃壁は図3〜図7で粘膜下浮腫による壁肥厚を示している(▲).図4と図5の↑が潰瘍性病変で,胃潰瘍の穿孔と診断し,腹水を認めないので保存的に治療し成功した.3週間後の上部内視鏡検査で胃体下部前壁に潰瘍性病変を認め(図A:△),生検で胃癌と診断され胃亜全摘術を行った.病理:Early gastric cancer,IIc,signet-ring cell carcinoma.CTで潰瘍性病変が胃癌であるとの診断が困難な症例は少なくないし,下記参照症例( EE13 )の文献では穿孔性胃潰瘍性病変の9%は胃癌であったと報告されている.









  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)4 【症例 GR 18】
2. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ3 【症例 ER 14,15】
3. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ3 【症例 EE 13】

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