上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ18 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 90】

回腸悪性リンパ腫.malignant lymphoma of ileum




図4〜図8によく造影される,全周性の壁肥厚を呈する小腸病変があり(△),骨盤腔内に位置するので場所は回腸の可能性が高い.その病変は図8の1→図9の2→図10の3→図9の4〜図1の12と拡張した小腸へ連続し腸閉塞の責任病変である.病変の長さは10cm前後と長く,全周性の比較的大きな病変であるのに最近まで無症状であったことは伸展性のある病変を示唆し,悪性リンパ腫(malignant lymphoma)を強く疑う.図Aは小腸造影で,全周性のやや不整な狭窄(▲)を呈する.手術・病理所見:盲腸から10cmの部位の病変で悪性リンパ腫(malignant lymphoma)であった.S:S状結腸,R:直腸.








参考症例(Plain CT,回腸悪性リンパ腫による腸重積):1ヶ月前から時々上腹部痛を感じていた.3日前近医で胃透視検査を受けたが異常はないと言われた.当日腹痛が再現し軽減しないため来院.体温:36.6℃,心窩部に軽度の圧痛があり,腸雑音は亢進している.図3〜図5で腫大した小腸内に虚脱した内筒(△)と血管を含む脂肪組織(すなわち腸間膜:▲)を認め腸重積である.図5〜図7の↑が重積の原因病変であるが単純CTだから病変の性状は不明である.図2〜図4で白矢印は後腹膜リンパ節腫大を示しているので悪性腫瘍,特に悪性リンパ腫の可能性が高い.手術で重積は環納されていたが小腸中央部に図Aの腫瘤を触れたので切除した.回腸には約10個のポリープ様腫瘤を,大動脈周囲には腫大したリンパ節を認めた.病理:malignant lymphoma,medium B-cell type.









文献考察:消化管原発悪性リンパ腫のDawsonの診断基準
【術前・術後のサーベイランスプログラム】 十二指腸・小腸 十二指腸・小腸悪性リンパ腫
  Author:須田武保(日本歯科大学新潟歯学部 外科), 大竹雅広, 畠山勝義, 味岡洋一
  Source:外科(0016-593X)65巻12号 Page1417-1423(2003.11)
Dawsonらの診断基準(Br J Surg 49:80-89,1961)は,次の5項目を満たす場合.1)表在リンパ節を触知しない,2)胸部X線上,縦隔のリンパ節の腫大を認めない,3)末梢血に異常がない,4)開腹時,消化管病変が主体でリンパ節腫大は近接のもののみ,5)肝・脾に腫瘍を認めない.

参考文献:J Am Coll Surg. 2003 Jul;197(1):127-41.
Management of gastrointestinal lymphoma.
Koniaris LG, Drugas G, Katzman PJ, Salloum R.
Review.PMID: 12831934
  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ7 【症例 RR 31】

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