上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ4 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 17】

絞扼性小腸閉塞(腸管壊死なし).Strangulated obstruction with no necrosis.








小腸だけの拡張だから小腸閉塞である.上腹部(図1)に腹水はないが骨盤腔に少量存在する(図14と図15:※).外径2.5cm以上に拡張した小腸は全体的に壁はよく造影され,壁肥厚を認めないから腸管壊死はなさそう.gaslessの小腸拡張であり,腹水があり,図12では腸間膜の浮腫がある(▲)のでclosed loopかどうかを検索するため図15のA1の小腸を追跡してみる.図14の2は図10の6で,Bは図11のEで閉塞し,図10と図11で虚脱した小腸(SB)がありclosed loopである.図10の丸数字1から始まるのが単純閉塞の小腸で,図2の丸数字10へと続く.診断は約15cm前後の絞扼性小腸閉塞だが腸管壊死はない.図10〜図12の↑は卵巣嚢腫であろう(子宮は摘出されている).前症例もそうだが婦人科手術,S状結腸切除や虫垂切除後に絞扼性小腸閉塞を起こすと,絞扼された腸管は骨盤腔に位置する場合が圧倒的に多い.手術で回腸15cmの,bandによる絞扼性小腸閉塞を認めたが,壊死所見はなくband切離のみ行った.









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文献考察:腸閉塞全国集計、絞扼性小腸閉塞は全手術例の14.9%を占め、その死亡率は7.4%
恩田昌彦, 高崎秀明, 古川清憲, 田中宣威, 森山雄吉
イレウス全国集計21,899例の概要
日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)20巻5号 Page629-636(2000.07)

Abstract:1996年〜1997年にイレウスで入院加療した患者を対象に全国集計を施行した.363施設の協力により,手術症例8,032例,保存治療症例13,867例を集計した.手術症例では癒着性イレウスが30.5%,腫瘍性が20.5%,絞扼性が14.9%,腫瘍の転移・播種が11.2%などであった.一方保存治療症例では癒着性が74.1%,麻痺性8.5%,腫瘍の転移・播種が4.8%であった.手術症例,保存治療症例の死亡率は各々10.5%,4.5%であり,全体では6.7%であった.原因別の死亡率は,癒着性イレウスでは1.4%,腫瘍性イレウスでは13.3%,腫瘍の転移・播種では45.5%,絞扼性イレウスでは7.4%であった.過去の全国集計に比べ,癒着性イレウスの頻度が増加し,特に保存治療症例の割合が増加している.
追記:イレウス分類は表1,癒着性イレウスの成因の推移と死亡率の推移は表2,癒着性イレウスのイレウス既往と癒着性イレウスの既往手術は図1.

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