2)【イレウス診療のpitfall いつ外科に送るか】 イレウスの病態とその鑑別
Author:沖永功太(帝京大学 医学部外科), 安達実樹, 味村俊樹, 松田圭二
Source:臨床消化器内科(0911-601X)19巻9号 Page1221-1228(2004.07)
要旨:イレウスは,腸管内容の通過が障害された状態と定義され,わが国ではイレウス(ileus)と腸閉塞(intestinal obstruction)はほぼ同義語として用いられてきた.英語圏では,一般的にparalytic ileus(麻痺性イレウス)を意味する言葉として用いられている.ここでは「イレウス」を,わが国での伝統的な用語として閉塞性と麻痺性の両者を含めた意味で用いることとした.イレウスはさまざまな原因によって起こり,多様な病態が含まれる.
イレウスは機械的イレウスと機能的イレウスとに分けられ(表3),また,小腸と大腸のイレウスは,診断および治療面でも分けて考えた方が実際的である(表4).さらに単純性イレウスか複雑性(絞扼性)イレウスかで治療の緊急度が異なり,両者を鑑別することは重要な問題である.
機械的イレウスは腸管および腸管外の器質的病変によって腸管の狭窄ないし閉塞をきたした病態であり,イレウスの中でも最も中心的な病態である.機械的イレウスの原因は,小腸イレウスの大多数は癒着性であり,大腸では大腸癌が最も多い.
機能的イレウスは腸管の狭窄や閉塞をきたす器質的病変はないが,腸管内容の通過が障害された状態であり,大部分は麻痺性イレウスである(表5).
|