外傷(Trauma)シリーズ2 EXPERT COURSE 解答 【症例 TE 8】

肝損傷(IIIa).AAST grade III






図2〜図8で脾臓周囲に相当量の,肝周囲に少量の腹水がある(※)が,脾臓損傷は認めない.その腹水は左腎嚢胞の内容物よりやや高濃度となっているので血性腹水で,量(図3)は肝周囲に150,脾臓周囲に300で約450mlである.肝右葉に裂創を認め,図10〜図17,図13〜図21の△はdelayed phaseで濃度が低下し拡大しているのでextravasationである.しかし,早期相の図9〜図11の ▲は,晩期相の図13〜図15で大きさと形に変化を認めないので仮性動脈瘤の可能性が高い.右腎と肝臓間の楕円形のCは腹水ではなく,図17で右腎上極に陥没像(↑)を認め,診断確実な左腎嚢胞と同濃度を呈し嚢胞である.血管造影でextravasation(図A,B:△)と仮性動脈瘤(▲)が確認され塞栓術を施行し,輸血なしで治癒した(Hb:10.5→6.7→9.2g/dl).















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文献考察:ISS(Injury Severity Score)
【消化器外科医に必要な重症度スコア】 病態別重症度評価法 外傷とInjury Severity Score(ISS)(解説/特集)
  Author:丹野克俊(札幌医科大学 救命救急センター), 森和久, 浅井康文
  Source:消化器外科(0387-2645)25巻5号 Page611-615(2002.05)
  Abstract:外傷患者の重症度を正確に判定することは治療効果の評価や予後評価,治療戦略を見直すうえで重要である.米国では交通事故増加を背景にAbbreviated Injury Scale(AIS)やISSが考案され,20年以上にわたり各種の比較研究等に利用され,外傷学の発展に寄与している.本稿ではAISとISSの評価法の詳細と有用性について解説した.更に,Trauma and Injury Severity ScoreとNew Injury Severity Scoreについても解説した.
追記:ISSは上記AISを基に算出される.全身を頭部,顔面,胸部,腹部,脊椎,上肢,下肢,その他の9部位に分類し,それぞれの重症度に応じて1〜6段階に評価を行う.AISのスコアが最大となる3つの部位を抽出し,それぞれを二乗したものを合計して導かれる.AISでいずれかの部位が6点と分類された場合は他の損傷部位にかかわらずISSは75点とするため,最大でも75点となる.ISSが25点を超えた場合,約10〜40%の死亡率が予測される.

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