図1〜図3の肝周囲の腹水(※)は“fluid-fluid level”(白矢印:hematocrit effectといわれ,血球成分が背側に血漿成分が前方に分かれて溜まる現象)を示し,血性腹水を強く示唆する.下段の図10〜図12で液状内容物を含まない盲腸(Ce)と虚脱した回腸末端(Ti),拡張した小腸は大部分がgasless,(腸間膜の濃度上昇を認めないが)これらの3所見は絞扼性小腸閉塞を示唆する.最下段の図18から追跡すると,Aは図15のVで閉塞し,1は図4の45となる.図15のabはaとbに分かれて上行し,図12のcdも同様に上行する.つまり,図15近辺で閉塞する小腸はVだけだから,追跡した小腸はそこでの単純性閉塞である.そこで盲腸(Ce)右側の小腸群が残ったが,図14の丸数字1と9で閉塞するclosed loopを形成していることが判明する.図10と図11,図13の局所性の腹水(▲)もこれらの小腸が絞扼されていることを裏付ける.図12の△は図11の小腸(丸数字4と6)と重なるので腹水ではない可能性があり,同様に図7の↑は腸間膜間の腹水であるが,図8の△は図9の小腸(cとd)と重なるのでそれらのpartial volume effectであろう.盲腸近辺の尾側で絞扼され,盲腸(Ce)を外側から変位させている所見は盲腸周囲ヘルニアに類似するが.虫垂切除後であり真の盲腸周囲ヘルニアではない.絞扼された小腸壁の造影効果を認めない部分があり,図1〜図3の血性腹水も考慮して壊死と診断する.手術で一塊となった回盲部脂肪織の中に回腸が潜り込むように嵌頓されており,20cm長の壊死を認めた.丸数字の壊死に陥った絞扼性小腸閉塞と診断したら正解.
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