図7〜図9で盲腸(Ce,Ti:回腸末端)は液状内容物を含まない,拡張した小腸はgaslessで,最下段の骨盤腔内には認めないが図10〜図14で腹水(※)を,軽度だが図7で腸間膜の濃度上昇(▲)を認めるので絞扼性小腸閉塞であろう.図6の△は図5のKと重なるので腸間膜の濃度上昇ではない.図11から追跡すると,Aは図5のKで,1は隣の図6の16で閉塞するのでclosed loopを形成している.図5と図6で虚脱した小腸(SB)を認め,図5と図4でbeak sign(↑)を呈し,図5から拡張し始める丸数字1から図1の丸数字5が口側の単純性閉塞の小腸である.Closed loopを形成している小腸の壁は丸数字の単純性閉塞の壁と比べて同等な造影効果を示しているように見えるが,単純CTの情報があれば壊死の診断が可能だったであろう.絞扼性と診断され緊急手術となった.S状結腸間膜が後腹膜筋膜に癒着し,1cm大のヘルニア孔を形成(図Bのハサミ),そこへ30cmの回腸が入り込み絞扼され黒こげに壊死に陥っていた( 図A:白矢印).発熱はなく,反跳痛と筋性防御を認めず,術前の白血球数は5300,CRP:0.03mg/dl で,絞扼を示唆する所見は全くなくても,CTで絞扼性小腸閉塞の診断が可能である.腹部手術の既往はないのに索状物による絞扼性小腸閉塞や癒着による単純性閉塞例を数例記載したが,索状物や癒着の原因は,1:魚骨,鶏骨やその他の異物による穿孔で軽度の腹膜炎を起こし,異物は肛門から排出された(2参照症例).2:自然治癒した憩室の穿孔や急性虫垂炎,3:症状が比較的軽いことを特徴とする結核性腹膜炎,4:女性ならPID(pelvic inflammatory disease:骨盤腹膜炎),などが考えられる.
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