図5と図6で盲腸(白矢印)が虚脱しており,拡張した小腸は機械的閉塞であろう.身体所見で右鼠径部に腫瘤を触れたので鼠径ヘルニア嵌頓による小腸閉塞と診断されたが,下段の図17〜図26の↑は腸管か? 図14から拡張した小腸を追跡するとAは図5のJとなり,1は同図の10となり上行する.図10のXとYも同様に上行するので右鼠径部近辺での閉塞はない.また図17の↑に連続する虚脱した小腸を認めないので↑の腫瘤は腸管ではない可能性が高い.拡張した小腸は,図は省略したが胃切後の上腹部での単純性閉塞である.手術でヘルニアはなく,↑の腫瘤は精索水腫であることが確認された.
詳細な病歴をとらず,身体所見をおろそかにし,すぐ画像診断に頼るところに大きな問題がある.鼡径ヘルニアは立位または腹圧をかけた時に出現し,横に寝かせると自然に消えてしまう,陰嚢水腫または精索水腫(女児ではヌック水腫)は常時ほぼ同位置にあり,硬くなく弾力性に富み,ペンライトなどで光を当てると光が透けて見える(透光性:日本小児外科学会HP: http://www.jsps.gr.jp/05_disease/gu/hydrocele.html ).鼡径ヘルニアは「グジュグジュ」といった感触がありやや硬く,透光性がない.水腫かヘルニアかを区別するには超音波検査が有用である.
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