外傷(Trauma)シリーズ11 EXPERT COURSE 解答 【症例 TE 51】

遅発性左横隔膜へルニア.Delayed left diaphragmatic hernia


図Aで胃泡が明らかに挙上して,縦隔が右方へ偏位しているので左横隔膜へルニアを疑うが,22年前に胸部写真で異常を指摘されているので横隔膜弛緩症と鑑別する必要がある.8ヶ月後の胸部写真(図B)で胃泡が上方へ移動し,縦隔の偏位も進行している.胃透視と注腸造影で横隔膜へルニアの診断が確定する.図Cの胃透視で↑がcollar sign(TR51の文献参照)を示し,ヘルニア門(横隔膜破裂部)である.食道胃接合部(図C:白矢印)以外の胃全体が胸郭内に脱出し,胃捻転を起こしている.図Dと図Eの注腸造影でも↑がcollar signを示しヘルニア門であり,横行結腸と下行結腸の大部分が胸郭内に脱出しており,遅発性左横隔膜ヘルニアである.

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図10〜図13は省略.CTで横隔膜へルニアの確定診断が可能か? 上図の胃透視と注腸造影所見から,ヘルニア門(横隔膜断裂部)は右横隔膜(肝臓)の頂上より5cm程尾側に位置するので図21あたりであろう.図6〜図9で胃後壁が肋骨に接しているのでdependent viscera sign(▲)を示しており,図21〜図25で,右横隔膜と比較すると↑は左横隔膜の欠損(破裂部)を示しているので横隔膜ヘルニアと診断可能である.手術で左横隔膜の中心部に約12cmの欠損部を認め,胸腔内に脱出した臓器は全胃,横行結腸と下行結腸の一部,大網の一部,小腸の一部と全脾臓であった.PTFE(ポリテトラフルオロエチレン,フッ素樹脂)を用いて修復した.













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