図5〜図13で造影効果を受ける腹壁直下の拡張した小腸(△)と,造影効果を認めない骨盤腔内の虚脱した小腸(↑)の相違点に注目する.下段のangio CTでその所見がさらに明白になる.腹壁直下の小腸(実は単純閉塞の小腸)は壁と腸間膜血管(▲)が強く造影されているのと比較して,↑の小腸(拡張はないが実は絞扼された小腸)とその支配血管は全く造影効果を示さず,血流のない小腸である.図AでSMAの閉塞所見を認めないが,↑の部位から血管の造影効果が減弱している.図Bと図Cで強く造影される空腸壁とは対照的に回腸(白矢印)は虚血状態を示している.S:S状結腸.回腸壊死の診断で手術となった.S状結腸間膜と回腸間膜間に索状物が形成されており,それと後腹膜筋膜との間隙に回腸が入り込み絞扼され,closed loopを形成していた.腸管壁の虚血所見を認めたが,絞扼を解除したら色調が改善し切除は不要であった.絞扼性小腸閉塞の診断が困難な症例にガストログラフィン造影が有用(下記参照症例)であるが,血管造影も診断価値が高いことを示している.拡張を伴わない絞扼性小腸閉塞はまれで,筆者の経験では100例中1,2例である(参照症例)が,早期例または軽度の虚血例である.
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