図1でガスで拡張した腸管の陥入部(↑)は頭側の▲まで伸びているからcoffee bean signであり,S状結腸捻転を示唆する.拡張した腸管がclosed loopを形成し,閉塞部位へ下行結腸と直腸が収束すればS状結腸捻転の確定診断となる.図2のAは図16の0でbeak sign(↑)を示し,図19のRで閉塞する.他方1は図19の18と図20の19でbeak sign(白矢印)を呈し,図24の23で閉塞する.図9の下行結腸D1は拡張した腸管に圧排され図17のD9で虚脱するが,次の図18のS1からS状結腸となり,図のように展開し図17のS22で閉塞する.図24の虚脱した直腸R1は上行して図17のR8となりPに連結するのでS状結腸捻転と診断できる.大腸ファイバー検査(筋性防御があるからむしろ禁忌)で捻転部を通過すると凝血塊と壊死に陥った粘膜が観察された.拡張したS状結腸の脱気を行ったと診療録に記載されてあるが,凝血塊または粘膜壊死を認めたら脱気せず,即刻検査を中止し手術室へ搬送すべきである.捻転が解除されなくても,脱気し腸管の拡張がとれれば,閉塞されていた静脈が開通し,壊死部静脈に含まれるエンドトキシンや細菌が全身に循環する可能性があるからである.手術で壊死に陥ったS状結腸捻転を認め,切除操作中に心停止を起こし不幸な転帰をとった症例である.直腸指診がなされておれば血便を認め(大腸ファイバーの禁忌),すぐ手術になった可能性がある.
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