下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 14 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 66】

絞扼性小腸閉塞・小腸壊死.Strangulated obstruction with necrosis












図2〜図5は省略.小腸閉塞かそれとも麻痺性イレウスか? 図13〜図16で右側結腸(A:上行結腸,C:盲腸)は便とガスを含み液状内容物で拡張しているのは小腸だけだから腸閉塞である.原因疾患発症からの時間と部位にもよるが,麻痺性イレウスでは右側結腸も小腸と同様な内容物を示す場合が多い.
腸管壊死・虚血のCT所見は,1)造影CTで壁が造影されないまたは造影が弱い,2)単純CTで壁が高濃度(出血性壊死),3)遊離ガス,4)SMVまたは門脈内ガス,5)壁内気腫(intramural gas),6)壁肥厚,7)大量の腹水,8)隣接する腹膜,腸間膜や後腹膜筋膜の充血・肥厚.1,2と5が特異性が高い.
A)図1の大量の腹水(※)は,単純閉塞ではないことを強く示唆する.B)図6〜図15の白矢印の小腸は3層構造(最外側の造影される固有筋層,最内側の造影される粘膜,その間のwater densityの粘膜下浮腫)の壁肥厚(target sign)を示している.C)図8〜図25の↑の小腸は,拡張はないが,壁の造影効果が全く認められず壊死に陥った,または高度の虚血状態を呈している.D)図9〜図12と図17〜図20で腸間膜の強い濃度上昇(▲)を示している.E)造影効果を認めないので追跡は不可能で証明はできないが.↑の小腸群は一定の範囲内に存在し,さらに強い腸間膜の濃度上昇を示しclosed loopを形成している可能性が高い.以上5つの理由で絞扼性小腸閉塞または捻転による小腸壊死と診断する.手術所見:索状物(図A:△)によってclosed loopを形成し,約80cmの空腸が絞扼され壊死に陥っていた(図B).











参考症例(小腸捻転・壊死):83歳女性.腹部手術の既往はない.2日前に下腹部痛のため近医に入院し,当日になっても腹痛が続き,腹部単純写真でニボーを認めたので紹介来院した.体温:37.5℃,下腹部に強い圧痛と,筋性防御がある.
図5〜図7で腹水(※)があり,図2と図3で腸間膜の濃度上昇(▲)を示し,図2〜図8の小腸群(↑)は壁の造影効果を認めず,gaslessであり,図1の典型的な腸管のwhirl(渦巻) signを見つければ捻転による小腸壊死との診断になる(図A).図4〜図6の白矢印は一見造影効果を受ける腸管壁に見えるが,腸間膜側の壁(△)は全く造影されないので肥厚した腹膜(上記所見の8)であろう.図Aは捻転解除(detorsion)された壊死小腸を示しているが,S状結腸捻転(下記症例LE18)同様に,壊死に陥った腸管の静脈はendotoxinや細菌を含んでいる可能性がある.捻転を解除するとそれらが全身に循環し,その結果ショックに陥る場合があり,捻転し壊死に陥った腸管は捻転解除せずに,または流出路の静脈に鉗子をかけてから捻転解除し,切除すべきである.










  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ4 【症例 ER 16〜20】
2. 下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 4 【症例 LE 18】

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