下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 11 EXPERT COURSE 解答 【症例 LE 54】

穿孔性虫垂炎.perforated appendicitis








盲腸(C)は図22までで,回腸末端(TI)は図12から始まる.小腸から盲腸に送り込まれる水分量は24時間で500ml程といわれるので,図10〜図22で右側結腸(A:上行結腸,C:盲腸)に相当量の水分を認めるのは正常ではなく,多くの場合肛門側の閉塞か麻痺性イレウスのいずれかである.上行結腸は図2と図3でほぼ虚脱し(↑),caliber changeを示しているが,腫瘍性病変や閉塞を起こす病変はなさそうだから,水様性内容物とガスで拡張した右側結腸と回腸末端(TI)は麻痺性イレウスを示していると解釈する.図17と図19で▲は遊離ガスであり,△も遊離ガスの可能性が高い.図18の1,図16の2と図15の3は腫大した虫垂であり,図23〜図26で腹水(※)もあり,穿孔性虫垂炎との診断がつく.同所見が手術で確認された.病理所見:gangrenous appendicitis.













参考症例(穿孔性虫垂炎・膿瘍形成と癒着性小腸閉塞):35歳女性.7日前に下痢,発熱と上腹部痛,6日前痛みは下腹部に移行し婦人科受診,PIDとして抗生物質を処方された.5日前嘔気が強く抗生物質が変更された.当日になっても症状が持続し,腹部膨満を呈してきたので外科へ転科した.体温:38.4℃,下腹部に著明な圧痛と,反跳痛を認めるが筋性防御はない.








図5〜図12で右側結腸(▲)は虚脱しており,拡張しているのは小腸だけだから,小腸閉塞である.麻痺性イレウスなら上記症例同様に,右側結腸も小腸と同様な液状内容物で拡張する.閉塞部位を検索するために,図12のABを追跡するとAとBは図のごとく頭側へ進展する.図10のCDと,図16のEFも同様に頭側へ上行し閉塞部位を示さない.図5の1は頭側へ上行し図1の5となり,近辺に虚脱した小腸(SB)があるので,ここが閉塞部位である.さらに,残った図9〜図14の↑は上下で盲端になり,強く造影される壁を有し,ガスとwater densityの内容物は膿瘍である.膿瘍は盲腸の内側に位置するので穿孔性虫垂炎が原因である可能性が高い.小腸閉塞は膿瘍と関連づけると,癒着による単純閉塞であろうと判断する.手術で2個の糞石(CTでは認識できない)を含む穿孔性,壊死性虫垂炎(図A)による膿瘍形成と,膿瘍壁への癒着による回腸の単純閉塞(図B:白矢印)を認めた.










  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ12 【症例 RE 58〜60】

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