上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ29 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 145】

膵尾部癌・横行結腸閉塞.Obstruction of transverse colon by pancreas tail cancer








図17〜図20で盲腸(C)は拡張し,下行結腸(D)は虚脱しているので両者間に閉塞していることを示唆する.上行結腸図16の1から肛門側へ追跡すると,数字順に展開し横行結腸図7の38で閉塞する.図5〜図7の腫瘤(↑)が原因と思われるが,図3〜図7の腫瘤(△)と一塊となっており,辺縁不整で,造影効果も不整で膵尾部癌を疑う.H:膵頭部.大腸ファイバー検査を行ったが,脾湾曲部を通過できず閉塞病変の確認は出来なかった.手術で進行性の膵尾部腫瘍による横行結腸閉塞を認め,盲腸瘻を造設した.図14〜図19の白矢印は壁内気腫であり,図17で盲腸は最大径12cmに近く,さらに図5と図6の,腎静脈が合流する部位の直上のIVCがほぼ虚脱し強い脱水を意味するので盲腸穿孔をきたす危険性が高いと認識すべきである.強い脱水があると非閉塞性腸間膜虚血症(NOMI:Non-Occlusive Mesenteric Ischemia)の要素が加わり穿孔を早める可能性がある(参照症例).












参考症例(胃癌・横行結腸閉塞):50歳女性.1週間前に心窩部痛が出現し,3日前から排便がなく,腹部が膨満してきたので来院した.熱はなく,腹部膨満以外に圧痛などはない.









図16で回腸末端(TI)が始まるが,図16〜図19で下行結腸(D)は虚脱し盲腸(C)は拡張を示しているので,上行結腸図15の1から肛門側へ追跡すると,図8の37で閉塞する.図4〜図9の↑病変が原因と思われるが,大腸癌による閉塞と診断された.大腸ファイバー検査で同部に粘膜病変はないが,閉塞を認めたため経肛門的にイレウスチューブを挿入した.図5〜図8の△は腫大したリンパ節の可能性があり,図3〜図6の▲は造影効果の強い胃病変を示している.胃内視鏡検査で前庭部,胃角部小弯側から後壁にかけて進行癌が発見された(図A:↑).手術で進行性胃癌と,小弯側と大弯側に大きなリンパ節転移を認め,転移病巣が大腸閉塞の原因であった.図14〜図16の白矢印は壁内気腫であり,腸管壁の壊死または高度の虚血状態を示す場合が多いので,躊躇なく拡張した腸管の減圧法を実施すべきである.












  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 【症例 GE 9】
2. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 【症例 GE 10】

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