上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ29 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 142】

肝癌被膜下破裂.Subcapsular rupture of hepatoma








図1〜図19のHは内部不整構造を示し,肝臓を凸レンズ状に圧排し(△),周囲に腹水を認めないので被膜下血腫である.図4〜図16の円形病変↑は辺縁不整な腫瘍性病変を示唆し,不均一な内部構造は血腫を含むと解釈する.従って,診断は肝腫瘍の被膜下破裂である.入院後も血圧は安定し,Hbは10.4g/dlを維持していた.第12病日に肝右葉S5とS6切除を行った(図A).病理:ruptured hepatocellular carcinoma.












参考症例(肝癌破裂):82歳男性.既往歴:52歳で虫垂切除,70歳で前立腺肥大症のため前立腺摘出,高血圧と高コレステロール血症の治療中.2時間前急に上腹部痛が出現し,増強するため救急車で来院した.ショック状態であったが輸液に反応した.体温:36.0℃,上腹部に圧痛がある.AFP:30ng/ml.
図2と図3で腹水があり(※),図1〜図11のHは図4〜図10で胃を背側へ圧排し,不整な内部構造を示し血腫である.図1〜図7で不整な造影効果を受ける円形病変(↑)は肝悪性腫瘍を強く示唆する.図6〜図10の▲はextravasation(造影剤の血管外漏出)であり,現在活動的に出血していることを意味する.AFPが高値を示し,肝細胞癌の破裂と診断する.図Aは血管造影で,白矢印が腫瘍辺縁,▲はextravasation,△は腫瘍内の不整な血管.塞栓術(embolization)を行い止血に成功した.












  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ14 【症例 ER 67,68】
2. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ15 【症例 ER 72】

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