上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ28 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 138】

空腸転移性腫瘍(悪性線維性組織球腫)・重積.Jejunal intussusception with metastatic tumor(malignant fibrous histiocytoma).








図1で胃と十二指腸(Du)が拡張しているので,肛門側に閉塞がないか図2の十二指腸1から追跡してみる.数字順に展開し,図8の32で閉塞する.図7と図8の▲は腸重積の嵌入部で,図6で空腸内に脂肪組織(腸間膜:△)を認める.腸重積の責任病変は図5〜図10の↑であり,単純CTでは正確な判断はできないことが多いが,腫瘍性病変にみえる.3日間の保存的治療で改善ないため手術となった.図Aのごとく空腸の腸重積(▲が嵌入部)を認め,切除したら,図Bの↑病変以外にその肛門側に脱落した,浮遊性の2個の同様な腫瘤を認めた.病理: malignant fibrous histiocytoma,左大腿部腫瘍の転移であろう.










参考症例(空腸癌による腸重積):73歳女性.既往歴:33歳時に帝王切開.前日からの次第に増強する,間欠的な上腹部痛のため来院した.体温:36.1℃,腹部に圧痛や異常所見を認めない.
図3〜図7の小腸(△)は,図6で腸管内に虚脱した内筒と血管を含む脂肪組織,すなわち腸間膜を含み,腸重積である.図7と図8の▲が陥入部である.誘因となる原因疾患は図4と図5の↑と思われるが,この例では詳細は不明である.重積を起こした病変は圧迫による虚血状態を示したり,出血を伴ったりするので造影CTでも正確な診断は困難なこともある.手術で空腸腫瘍による重積を認め切除した(白矢印が病変).病理:moderately differentiated adenocarcinoma.











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文献考察:転移性小腸腫瘍27例,原発巣は肺癌が最も多い(表).
【消化管への転移性腫瘍】 転移性小腸腫瘍の画像診断
  Author:岩下生久子(国立病院九州がんセンター 放射線診断部), 牛尾恭輔, 岩下明徳, 平賀聖久, 宮川国久, 下田忠和, 宇都宮尚, 上田真信, 西山憲一, 井野彰宏, 岡村健, 一ノ瀬幸人, 村中光, 渡辺秀幸, 黒岩俊郎
  Source:胃と腸(0536-2180)38巻13号 Page1799-1813(2003.12)
  Abstract:転移性小腸腫瘍27例について検討した.原発臓器は肺癌,悪性黒色腫が多くみられ,原発巣の発見から転移巣発見迄の期間は平均13.9ヵ月であった.転移に伴う症状では下血が最も多く,閉塞,穿孔と続いた.腫瘍の最大径と症状の間に相関がみられ,小さいうちから閉塞症状を呈してみつかる群と,大きくなっても閉塞を来さず,下血によって初めてみつける群がみられた.両者間には病理組織学的にも相違が認められ,閉塞群では強い間質反応または重積の痕跡が認められ,出血群では両者共に弱い傾向がみられた.形態は,隆起型が約25.9%,潰瘍型が74.1%で,潰瘍型の中では,非狭窄型が全体の約40%と多くみられた.小腸転移が発見された時点で52%に他臓器にも転移を認めており,予後は50%生存期間が3ヵ月と不良であったが,2年以上生存した症例も25%あり,治療法の進歩に伴い小腸転移があっても長期予後が期待できるようになると考えられた

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