上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ28 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 136】

総胆管結石.CBD(Common Bile Duct) stone(choledocholithiasis)








胆嚢(GB)の腫大(短軸で5cm,長軸で8cm以上)はないが図2と図3で肝左葉の末梢で胆管(△)を認識でき,図5と図6で肝門部胆管(▲)が1cm以上に拡張しているので総胆管閉塞を疑い尾側へ総胆管(▲)を追跡すると,図17と図18で急に拡張が途絶える(↑).そこが閉塞部位で,責任病変は,外部病変からの圧迫を示唆する所見を認めないので,腫瘍性胆管病変か結石であろうが,その鑑別はできない.乳頭部の結石嵌頓の可能性を考慮し,次に膵炎の合併がないかを検索することが大事である.膵腫大はなく,周囲に液貯留や脂肪組織の濃度上昇を認めず,膵臓は正常に造影され急性膵炎を否定できる.翌日には発熱(37.8℃)が出現し,血圧が急に80mmHg台に低下したのでAOSC(Acute Obstructive Suppurative Cholangitis:急性閉塞性化膿性胆管炎)と診断し緊急手術を行った.総胆管内に膿性胆汁を認め,乳頭部に小結石が嵌頓していたので用手的に十二指腸へ押し出した.術後は順調に経過した.












参考症例(Plain CT,胆石膵炎):42歳女性.焼酎を毎日5,6杯飲む.3日前に発症した上腹部痛と嘔吐のため来院した.体温:36.3℃,心窩部に圧痛があるが軟.
図8〜図10で乳頭部に嵌頓した総胆管結石(↑)を認める.図1と図2で膵尾部(T)と体部(B)が椎体横径の2/3以上に,図6と図7で膵頭部が椎体横径以上に腫大している.さらに図1〜図8で尾部周囲から後腎傍腔に液貯留(△)を認め,急性膵炎(胆石膵炎)である.図1〜図4の▲は低濃度を示し,膵壊死の可能性を示唆する.内視鏡下に乳頭部切開し排石した.












下段の図13は3週間目のCTで相当量の液貯留(▲と△:線維性皮膜が形成されるのに4週間以上かかるので仮性嚢胞とは呼ばない)は図1〜図4の↑部分は壊死に陥っていることを裏付ける.図14は6週間目のCTで,仮性嚢胞であり,図15は4ヶ月目のCTで,仮性嚢胞は次第に縮小し,その後の腹部エコー検査では完全に消失した.




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文献考察:急性閉塞性化膿性胆管炎の治療方針(図)
【消化器外科領域の緊急手術・処置】 肝・胆・膵 急性胆管炎
  Author:園田幸生(九州大学 大学院 医学研究院 臨床腫瘍外科), 小林毅一郎, 川本雅彦, 許斐裕之, 竹田虎彦, 田中雅夫
  Source:外科(0016-593X)65巻3号 Page306-310(2003.03)
要旨:急性胆管炎は胆管結石, 胆道再建術後, 胆道系悪性腺癌などによる胆管の閉塞・胆汁流出障害に細菌感染が加わった病態であり, 腹痛・発熱・黄疸のCharcot三徴を主症状とする.急性胆管炎は絶食,抗生物質による保存的治療で改善することがあるが, 感染胆汁により胆管内圧が上昇するとcholangiovenus refluxが生じ胆管内のエンドトキシンが血中に移行し, ショックや意識障害(Reynolds五徴)をきたし, 膿性胆汁を伴う急性閉塞性化膿性胆管炎(acute obstructive suppurative cholangitis : AOSC)の状態となる.AOSCは急速に病態が悪化し敗血症に移行するきわめて死亡率の高い疾患であり, 早期の診断・治療が必要である.図に当科における急性胆管炎の治療方針について示す.血液生化学検査で黄疸を認めず, 炎症所見が軽度の場合には保存的治療で経過観察を行い, 症状が落ち着いてから原因疾患の治療を行うが, 黄疸を認める場合やAOSCなどの重症胆管炎が疑われる場合には, 減黄と感染胆汁の除去を目的として胆道ドレナージ術を行う.PTBD(percutaneous transhepatic biliary drainage:経皮経肝的胆道ドレナージ術),EBS(endoscopic biliary drainage:内視鏡的胆道ドレナージ),EST(endoscopic sphincterotomy).
  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ10 【症例 ER 47】

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