文献考察:尿膜管遺残.urachal remnants
戸谷拓二. .尿膜管遺残. 小児外科. 新外科学大系30E. 中山書店. 東京. 86-88,1992
要旨:胎生期の尿膜管urachusは腹膜と腹横筋膜との間を膀胱底部より臍部へ走行し,尿嚢allantoisと連絡している.出生後は閉鎖し結合組織性の索条物すなわち正中臍索median umbilical cordとなるが,この過程の障害によりいろいろな尿膜管遺残urachal remnantsが形成される.1)尿膜管開存.patent urachus:尿膜管は閉鎖せず完全に遺残する.臍部から膀胱底部まで瘻管で開通しているので臍から間欠的に尿が流出し,尿膜管瘻urachal fistulaとも呼ばれる.2)尿膜管洞.urachal sinus:瘻管は膀胱と連絡しておらず,臍部にのみ開口する.尿漏出をみないが,臍部から粘液や膿を分泌する.3)尿膜管嚢胞.urachal cyst:臍と膀胱底部の中間で,腹壁正中に嚢胞を形成し,臍部に瘻孔をみない.乳幼児に多く,極めて感染しやすい.膿瘍を形成すると尿膜管化膿pyourachusと呼ばれる.感染により嚢胞が膀胱または臍部に自潰して膿尿,臍からの膿排泄をみることがある.4)尿膜管性膀胱憩室.urachal diverticulum:尿膜管洞とは逆に臍部と連絡がなく,瘻管は膀胱にのみ開口する.感染により膀胱炎症状が出現する.
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