文献考察1):餅による食餌性イレウス,本邦集計28例(表) 餅による食餌性イレウスの2例
Author:山崎良定(公立宍粟総合病院 外科), 山岡啓信, 西川宏信, 高田昌彦, 中島幸一
Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)65巻9号 Page2362-2367(2004.09)
Abstract:過去10年間で餅による食餌性イレウスを2例経験した.自験例を含む1982年以降の本邦報告28例の文献的考察を加えた.症例1は68歳,男性.嘔吐・突然の上腹部痛,腹部CTにて小腸の拡張・鏡面像を認め,またhigh densityな物質を腸管内に認めた.絞扼性イレウスとして緊急開腹したが,小腸切開にて嵌頓餅を摘出した.症例2は65歳,女性.間欠的腹痛・嘔吐,腹部CTでhigh densityな物質を腸管内に認め,餅イレウスと診断,緊急開腹・小腸切開で嵌頓餅を摘出した.2例とも胃切の既往はなく,食事歴で餅を摂取していた.餅嵌頓イレウスは一度経験すれば,次回より腹部CTで容易に診断できる.しかし腹膜刺激症状が強いため,腹部症状に応じて保存的治療よりも緊急手術のタイミングをはかる必要がある. 追記:過去20年間で餅による食餌性イレウス報告例は28例で,平均年齢は58歳と中高年に多く見られ,男女比は18:10と男性に多い.CTで腸管内にhigh densityな物質を認めるも,餅片とは診断できた例は少なく,正診率は19%であった.記載されている18例の閉塞部位は盲腸から平均53cmの回腸であった.96%が開腹され,術式は用手誘導12%,小腸切除23%,小腸切開65%.胃内に残っているものを胃切開で摘出した例は23%.餅片の大きさは3〜5cmで,2個以上認めた.穿孔例は21%,ショック例は7%に見られた.
文献考察2):餅による食餌性イレウス,本邦集計手術例51例 餅による食餌性イレウスの2例
Author:二村直樹(羽島市民病院 外科), 松友将純, 安村幹央, 立山健一郎, 多羅尾信, 阪本研一
Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)24巻1号 Page73-77(2004.01)
Abstract:症例1:66歳女.腹痛,嘔気,嘔吐が出現した.血圧74/36mmHgで,腹部は膨満し,臍部周囲を中心に腹痛があり,Blumberg徴候,筋性防御を認めた.腹部CTで小腸の拡張を認め,腸管内にhigh density tumorを認めた.緊急開腹術で回盲部より口側30cmの回腸内に腫瘤を認め,切開し摘出した.腫瘤は主に径3.5cmと1.5cmの餅で,4日前に食べたことが確認された.術後経過順調で18病日に退院した.症例2:76歳女.腹痛,嘔気が出現し,Blumberg徴候,筋性防御はなかった.腹部CTで胃内と小腸内にhigh density tumorを認め,翌日は各々移動して十二指腸内と小腸内に認めた.入院日の上部消化管内視鏡で胃内に白色の腫瘤を認め,餅と考えられた.前日に餅を食べたことが確認され,自然排出を期待して保存的に経過観察した.入院3日目にイレウス管を留置し,腹部症状は軽快した.入院7日目のイレウス管造影で小腸内に異物を認めず,排出されたと判断し,以後経過良好であった. 追記:1988年〜2002年までの本邦集計手術例51例で,男女比は30:21,平均年齢52.6歳(2〜81歳),胃切術の既往は35.3%に認められた.食餌内容はコンニャク類が23.5%と最も多く,次いで餅17.6%,海草類13.7%が多かった.術前に画像診断で腸管内異物を診断し得た症例は13.7%(7例中6例はCT)と少なく,術前診断は困難であった.外科治療は腸切開による摘出が68.6%,用手的に大腸へ誘導が17.6%,腸切除が13.7%.閉塞部位は盲腸から100cm以内が71.8%と多かった.
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