上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ23 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 113】

右側胸膜炎.Right pleuritis








図1,図2と図3に胸水を認める(↑)以外に遊離ガス(▲は脂肪組織である)や腹水はなく,肝,胆道系に異常なく,膵炎の所見もなく,右腎とその周囲にも異常所見をみとめない.つまり胸膜炎(pleuritis)である.腹膜刺激症状があるため消化管穿孔の可能性が高いと判断され試験開腹が行われたが,腹腔内には異常所見を認めなかった.図Aが当日の胸部写真で図Bが翌日の胸部写真で右側に陰影増強を認め,胸水貯留が明白となった.胸水の培養は陰性であった.この症例のように胸膜炎,肺炎や心筋梗塞が上腹部痛で発症し,腹部所見も急性腹症の所見を呈することがあるのでご注意を! 腹部エコー検査またはCT検査で急性腹症の所見を認めず,胸水を認めたら2,3時間経過観察後再評価すべきである.








参考症例(左側胸膜炎):86歳女性.24時間前に発症した左背部痛,左上腹部痛と発熱のため来院した.体温:38.0℃,腹部に特記すべき所見はない.胸部X線写真(図8)で異常を認めないが,CTでは左胸腔内に少量の胸水がある(図1と図2:↑).2日後には胸水量が増加し(図9と図10:△,図12:白矢印),胸膜炎と診断された.腹部CT(図5〜図7)で見れる部位より頭側での胸水貯留であり,上腹部痛の鑑別診断には胸部疾患を常に念頭におき,確定診断に至らないときは胸部CT検査も考慮すべきである.













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文献考察:上腹部痛を呈する胸部疾患
【急性腹症】 急性腹症における画像診断の進め方
  Author:水沼仁孝(大田原赤十字病院)
  Source:画像診断(0285-0524)19巻9号 Page965-972(1999.09)
追記:表1と表2に示すように,急性腹症の原因は腹部以外の疾患も多数含まれること,特に心窩部痛の鑑別診断に腹腔外の肺炎,狭心症,心筋梗塞や解離性大動脈瘤を,左右上腹部痛では胸膜炎を常に念頭に置くことが大事である.

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