上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ23 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 111】

糖尿病性ケトアシドーシス.Diabetic ketoacidosis.




図1で肝臓は腹部横断面の半分以上を占め腫大しており,アルコール性脂肪肝である.図4〜図6で主膵管の拡張と膵石を認める(↑)ので慢性膵炎の所見があり,慢性膵炎の急性増悪と診断された.しかし,膵周囲の液貯留や脂肪組織の濃度上昇を認めないため,腹痛の原因は他にもあり得ると考えるべきである.Du:十二指腸.血清アミラーゼ:49 IU/L(正常),血糖:410mg/dl,検尿でケトン体:3+,血液ガスでpH:7.256,PaCo2:9.9mmHg,HCO3:4.2mEq/l,B.E.-19.6mEq/l とアシドーシスを示し,糖尿病性ケトアシドーシスによる腹痛と診断された.インスリン皮下注で血糖をコントロールしたら,腹部症状が著明に改善した.




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文献考察1):糖尿病性ケトアシドーシス(diabetic ketoacidosis)
Surg Clin North Am. 1997 Dec;77(6):1433-54.
Nonoperative causes of abdominal pain.(表1)
Roy S, Weimersheimer P.

In conclusion, it is good practice to consider operative (life-threatening) entities before nonoperative processes in the differential diagnosis of abdominal pain. However, a prudent and educated surgeon considers, even if only briefly, all possibilities before proceeding to operation.PMID: 9431348
要旨:メカニズムは解明されていないが糖尿病性ケトアシドーシスは高血糖とケトアシドーシスとともに腹痛を呈するので,内科医にも外科医にも急性腹症の鑑別診断に注意を要する疾患である.高血糖とアシドーシスが麻痺性イレウスから腸管拡張を惹起し,さらに肝被膜の緊張が腹痛の原因と考えられる.腹痛は広範囲で,熱はなく,血糖をコントロールすれば速やかに腹痛が消失するのが特徴である.

文献考察2):主なNonsurgical acute abdomen(表2)
Day Surgery & Same Day Surgery 急性腹症(解説)
  Author:島津元秀(慶応義塾大学 外科), 大谷吉秀, 大上正裕, 他
  Source:外科診療(0433-2679)38巻増刊 Page211-218(1996.04)

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