上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ22 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 108】

十二指腸潰瘍穿孔.Perforated duodenal ulcer






図1と図2で遊離ガス(白矢印)と腹水(※)を認め,図3〜図11のGも遊離ガスである.胃に急性病変はなさそうだから十二指腸を検索する.図7と図8の十二指腸球部は粘膜下浮腫(▲)を示しており,潰瘍そのものは認識できないが十二指腸潰瘍の穿孔と診断していい.図Aのガストログラフィン造影で十二指腸潰瘍(△)と,遊離腹腔内への大量の造影剤の漏出を認めた(↑).手術の適応と思われるが,保存的治療を試みた.36時間後に腹膜刺激症状は改善せず,CTで腹水の増加を認め(図12:※),ガストログラフィン造影で遊離腹腔内への造影剤の漏出は続いており(図B:↑)手術となった.十二指腸球部前壁に8mm大の穿孔を認め.大網充填術を行った.合併症なく3週間で治癒退院したが,造影剤の遊離腹腔内への漏出は手術の適応である.








参考症例(十二指腸潰瘍穿孔):37歳男性.4日前から上腹部痛があり,2日前近医で胃透視検査を受けたが結果はまだ聞いていない.前日に上腹部痛が増強したので来院したが,鎮痛剤で軽減したので帰宅した.当日になって上腹部痛がさらに増強したので再来院.体温:37.4℃,心窩部に圧痛と反跳痛があるが筋性防御ははっきりしない.
図1〜図4で腹水(※)と遊離ガス(白矢印)があり,胃には病変はなさそうだから十二指腸に注目する.図8〜図11の十二指腸球部は,ガスで拡張した部分以外で,軽度だが粘膜下浮腫を示し(▲),明白な壁欠損は認めないが十二指腸潰瘍穿孔の可能性が極めて高い.図Aの胃・十二指腸造影検査で,十二指腸潰瘍(△)から遊離腹腔内へ造影剤の漏出(↑)を認めた.保存的治療を試みたが,2日後の腹部エコー検査で腹水の増量を認めたため手術となり,十二指腸潰瘍穿孔が確認された.単純閉鎖を行い,術後は順調に経過したが,造影剤の,遊離腹腔内への漏出所見は即手術の適応である.














  【参照症例】   1. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ2 【症例 EE 10】
2. 上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ3 【症例 EE 14】

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