上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ22 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 106】

十二指腸潰瘍穿孔.Perforated duodenal ulcer




遊離ガスを認めないが,図16と図17の腹水(※)は,もし消化性潰瘍病変があれば穿孔を意味する.胃角部と前庭部に粘膜下浮腫を認めず胃には急性病変はなさそうである.図12の1から十二指腸を逆行性に頭側へ追跡すると図8の6と図9の7が十二指腸球部である.十二指腸内腔は図8と図9の白矢印だから,図10と図11の↑は十二指腸から突出した病変で,タッシェ(tache:複数の潰瘍廏痕があるとき,間の粘膜が外側に突出して見える)か,または潰瘍だが,その壁は粘膜下浮腫(図10〜図13 :▲)を伴っており,潰瘍と診断する.胃に病変はなさそうで,十二指腸球部の浮腫所見と腹膜刺激症状があることから十二指腸潰瘍穿孔と診断されたが,腹水が少量であるため保存的に治療し,翌日には症状が改善した.翌日の内視鏡検査で十二指腸球部に巨大潰瘍を認めた(図A:△).









参考症例(十二指腸潰瘍):65歳男性.1週間前風邪をひき市販の薬を内服していた.3日前心窩部痛が出現し,近医受診し内服薬を処方されたが腹痛が軽減しないため来院した.体温:35.9℃,心窩部に圧痛がある.
遊離ガスを認めない.図5〜図11で十二指腸球部から下行部で粘膜下浮腫による壁肥厚を示し(▲),図11〜図14では後腹膜の液貯留(均一な境界鮮明な低濃度)または浮腫(不均一な境界不鮮明な低濃度)を示している(△)ことは,十二指腸潰瘍穿通,または重度の十二指腸炎を示唆する.症状が改善するのに7日間のNPOと抗潰瘍剤投与を要したが,10日目の内視鏡検査で十二指腸球部のkissing ulcerを認めた(図A:↑).十二指腸壁は胃より薄いので5mm以下のthin slice CTでないと潰瘍を示唆する壁欠損像を認識できないことが多いが,この症例のように粘膜下浮腫による壁肥厚があれば潰瘍の可能性は十分あると考えるべきである.















  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)4 【症例 GR 20】
2. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ10 【症例 RE 50】

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