文献考察1):内ヘルニア総論(図,表) 内ヘルニアのCT診断
Author:佐藤秀一(横浜旭中央総合病院 放射線科), 竹山信之, 吉田暢元, 新城秀典, 後閑武彦
Source:画像診断(0285-0524)25巻8号 Page1034-1049(2005.07) 要旨:図は9種の内ヘルニアを示す.表は内ヘルニアの分類と欧米での頻度(Hansmann GH:Arch Surg 39:973-986,1939).我が国では腸間膜裂孔ヘルニアが最も多い.
文献考察2):内ヘルニア,過去5年間の本邦報告例56例 内ヘルニアによる絞扼性イレウスの2例
Author:野崎久充(聖マリアンナ医科大学 解剖), 山田恭司, 小幡知行, 他
Source:聖マリアンナ医科大学雑誌(0387-2289)25巻1号 Page81-86(1997.02) 要旨:腹腔内ヘルニアの定義は「体腔内の異常に大きいfossa,fovea(窪み,窩),foramen(裂孔)の中に臓器(主に腸管)が嵌入する状態」とされる.腹腔を中心に考えると, 閉鎖孔ヘルニア, 坐骨孔ヘルニア, 横隔膜ヘルニアなどは外ヘルニアにあたり除外される.また, 手術によって形成された裂孔への臓器の嵌入は純粋な内ヘルニアとはいいがたく除外される.Steinkelの分類により,(1)腹腔内臓器が嵌入する部位により十二指腸空腸窩, 盲腸窩, 網嚢孔などに腹腔内臓器が嵌入する腹膜窩ヘルニア, (2)腸間膜, 大網, 子宮広間膜などの異常裂孔に嵌入する異常裂孔ヘルニアに分類され, 欧米では腹膜窩ヘルニア, 特に傍十二指腸ヘルニアが多く約半数以上を占めるとされるが, 本邦では異常裂孔ヘルニアによる報告例が多い.過去5年間の本邦報告56例においては,1)腸間膜異常裂孔によるもの23例(41%),2)大網・小網異常裂孔によるもの13例(23%),3)子宮広間膜異常裂孔によるもの12例(21%),4)盲腸窩・傍十二指腸窩などその他8例(14%)であった.
文献考察3):傍十二指腸ヘルニア本邦集計101例,左が67.6%,右は30.7% 術前CT画像にて疑われた,左傍十二指腸ヘルニアの1例
Author:山口智弘(滋賀医科大学 外科), 内藤弘之, 遠藤善裕, 来見良誠, 花澤一芳, 谷徹
Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)63巻8号 Page1901-1904(2002.08)
Abstract:14歳男子.1年前より4回の腹痛発作を繰り返していた.4度目の腹痛発作時に腸閉塞の診断でイレウス管を挿入し,腸閉塞は解除されたが腹痛発作を繰り返す為,診断治療目的で腹腔鏡補助下に手術を施行した.その結果,左傍十二指腸ヘルニアと診断し,中腹部正中切開で開腹したところ,径約8mmの白色強靱な索状物が回腸末端から口側約80cmの小腸間膜とS状結腸間膜の間に存在した.この索状物は胎生期遺残物で脈管環と考えられ,これによる締め付けが腸閉塞の原因と考えられた.索状物に脈管のないことを確認後,切離してヘルニア嚢より小腸を取り出し,下腸間膜静脈と下腸間膜動脈に囲まれた部位がヘルニア門となっていた為これを縫合閉鎖した.比較的若年で,開腹手術の既往がなく,腹痛を繰り返す症例では傍十二指腸ヘルニアの可能性を考慮する必要があり,その診断には造影CTが有効であると考えられた. 追記:傍十二指腸ヘルニア本邦集計101例中,左が69例(67.6%)で右は31例(30.7%),発症年齢は生後3日から75歳までだが,40歳までが61例で半数以上を占めている.男性:女性は69.3%:28.4%で男性に多い.発生頻度としては,欧米では全内ヘルニアのうち53%といわれるが,我が国では24.2%で腸間膜裂孔ヘルニアに次いで多い.術前正診率は10.5%と低く,診断の難しさを物語っている.臨床症状は,腹痛,嘔吐と腫瘤の触知が三大症状であり,その中でも間欠的腹痛が最も多く,70〜80%は長期にわたる既往を持っている.
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