上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 95】

小腸アニサキス症.Small bowel anisakiasis








図16と図17の骨盤腔内に腹水があり(※),図5〜図14には一部小腸が浮腫性壁肥厚を示している(↑).小腸の拡張を認めるが,壁肥厚が消失する図5(↑)の部位1から拡張し始め数字順に展開する.他方では壁肥厚が消失する図13のA〜図10のHは拡張のない小腸が連続するので,閉塞の原因は約15〜20cmの粘膜下浮腫を呈する病変(↑)であり,それは限局性の急性腸炎の所見である.鎮痛剤で腹痛軽減せず臨床的に絞扼性イレウスの診断で手術が施行された.盲腸から60cmの部位で白苔を伴う回腸壁の炎症性壁肥厚があり切除したら粘膜に長さ3cmのアニサキスが付着していた(図A:▲).








参考症例(小腸アニサキス症):71歳男性.入院歴や腹部手術の既往はない.前日夕食に鰯(イワシ)を食べた後上腹部痛が出現し,当日の朝来院した.体温:37.0℃,心窩部に圧痛のみを認める.
図3〜図8の↑は粘膜下浮腫で壁肥厚した小腸で,図11と図12で腹水を認める(※).図8の1から液状内容物で拡張した小腸は図1の10となり,他方図3のA〜図8のFは虚脱しているので,拡張の原因は図3〜図8の壁肥厚を示す小腸で,限局性の腸炎を示唆し小腸アニサキス症を強く疑う.腸重積と診断され3日後手術となった.Treitz靱帯から30cmの空腸で硬い腫瘤による閉塞を認め,そこから口側が拡張していた.腫瘍性病変を疑い切除したら,粘膜下にアニサキス幼虫の虫体を認めた(図A:▲).













ER95
文献考察:小腸アニサキス症,部位は回腸が多く,罹患範囲は50cm以上は36%,50cm未満が64%(表)
【消化管感染症2002】 寄生虫性感染症 消化管アニサキス症
  Author:松本主之(九州大学医学部附属病院 光学医療診療), 藤澤聖, 迫口直子, 檜沢一興, 酒井輝男, 木村豊, 飯田三雄 Source:胃と腸(0536-2180)37巻3号 Page429-436(2002.02)
  Abstract:アニサキス症はAnisakis亜科に属する線虫の幼虫による感染症である.幼虫は消化管壁に刺入して好酸球性蜂窩織炎ないし肉芽腫性腫瘤を形成するが,全身性アナフィラキシーを誘発することもある.食道から直腸にいたる全消化管に病変をきたすが,胃の罹患が圧倒的に多い.胃アニサキス症は上部消化管内視鏡検査により虫体を確認し摘出で治療する.一方,腸アニサキス症は閉塞症状を呈し,腹部超音波検査での腸管壁肥厚と口側の拡張,及び腹水の存在が診断に有用である.X線所見として限局性で潰瘍形成を伴わない拇指圧痕像ないし鋸歯像と腸管の伸展不良が特徴的で,浮腫が高度な部位に虫体が描出される.

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  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)6 【症例 GE 26】

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