図2〜図4で膵尾部(T),図4〜図7の膵体部(B),図9〜図15の膵頭部(H)に腫大はなく,周囲に炎症所見や液貯留はなく,膵実質は均一であり急性膵炎の可能性は極めて低い.図2の△は膵尾部周囲の脂肪組織の濃度上昇にみえるが、図1の胃液がちょうど重なる部位にあるのでpartial volume effectと解釈すべきである.従って腹痛の他の原因を検索する.下2段の図13〜図20で十二指腸が食物残渣で拡張しているので図13の1から肛門側へ追跡すると,図20でUターンし頭側へ伸展し図9の19となる.図14〜図19の↑の部位で十二指腸がbeak signを呈しているので閉塞または狭窄があると推測する.卵巣摘出の既往はあるが上腹部に癒着はないと判断し,Treitz靱帯の屈曲部での食餌性イレウスの可能性が高い.Afferent loop syndrome(下記参照症例)と同様な機序(十二指腸膨満の影響で膵臓の循環障害が起こる,または十二指腸内圧上昇から膵管の内圧上昇を伴う)で血清アミラーゼ値が上昇しても矛盾しない.急性膵炎として治療され,4日目に腹痛が消失し食事を開始した.MRCP検査で異常を認めなかった.
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