上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ19 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 95】

十二指腸壁内血腫.intramural hematoma of duodenum




単純CT図1〜図4で十二指腸の走行部位に一致してdensityの高い(筋肉と同等または筋肉以上)腫瘤があり(△),図11〜図14の造影CTではdensityの低い腫瘤だから血腫,すなわち十二指腸壁内血腫を強く示唆する.図12〜図14では右前腎傍腔に液貯留を伴い(△),図12と図13の↑は異常血管または造影剤の血管外漏出(extravasation)を示唆する(早期相と晩期相のdouble phase造影CTを撮れば両者の鑑別は容易である).第7病日に行った十二指腸造影では十二指腸水平脚で背側からの圧排像を示し(図A:白矢印),第8病日に行った内視鏡検査では粘膜下腫瘍様の腫瘤性病変を認めた(図B:↑).Du:十二指腸 .十二指腸粘膜下腫瘍の診断で手術を行ったら十二指腸水平脚の壁内血腫を認め,血腫除去と十二指腸壁の一部を切除した.病理報告:血腫の壁には毛細血管の拡張・増生を伴っておりangiodysplasia(図12:↑)の破綻を否定できない.












参考症例(十二指腸壁内血腫):14歳男児.von Willebrand病(type III)のためコンファクトFを家庭内自己注射を続けているが,薬剤が手に入らず1週間注射していない.数時間前に急に上腹部痛が出現しまもなく頻回の嘔吐が続いたため来院した.体温:36.0℃,心窩部に圧痛があるがsoft and flat.
図4〜図12の↑は十二指腸の走行に一致し,低濃度の腫瘤様病変の中にやや高濃度の不整な部分を含み十二指腸壁内血腫の可能性が高い.その後腹腔内出血を伴い大量の輸血を要したが,コンファクトの静注で保存的に治癒した.












文献考察:十二指腸壁内血腫
【知っておくべき疾患 十二指腸】 十二指腸壁内血腫
  Author:澤野誠(東京都立墨東病院)
  Source:臨床消化器内科(0911-601X)15巻9号 Page1255-1260(2000.07)
要旨:十二指腸壁内血腫はまれな病態であるが, 近年内視鏡検査の合併症として報告例もある.成因の70%は外傷性で, 非外傷性のものは凝固障害が原因となった特発性, 急性膵炎などによる原発性, 内視鏡検査に伴う医原性のものがある. 症状はおもに上部消化管通過障害の症状であり, 腹部症状を認めることはまれである. 診断は消化管造影, 内視鏡による. CTや超音波検査も診断に有用である. 治療としては保存的治療, 外科的治療があるが, 現在のところ前者が第一選択である.
  【参照症例】   1. 外傷(Trauma)シリーズ5 【症例 TE 22】

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