上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 94】

右閉鎖孔ヘルニア.Right obturator hernia.




図1で盲腸も下行結腸も虚脱しているので拡張しているのは小腸だけだから小腸閉塞である.右下腹部痛シリーズResident Courseの症例RR18で言及したように,小腸閉塞を疑ったらまず外ヘルニアの嵌頓がないかを検索する.図11と図12で恥骨筋と外閉鎖筋間に嵌頓した腸管があり(↑),閉鎖孔ヘルニアである.図10〜図7の▲は虚脱した小腸で,図8の1からは拡張した小腸が数字順に展開し,閉鎖孔ヘルニアが閉塞の原因となっている.図10と図11の△は膀胱の一部であろう.手術で同所見が確認された.









参考症例(Plain CT,閉鎖孔ヘルニア):90歳女性.腹部手術の既往はない.6時間前に上腹部痛が出現し,頻回の嘔吐が加わり来院した.熱はない.腹部は膨満しているが圧痛はなく,腸雑音が亢進している.
右鼠径ヘルニアを認める(図10〜図13:白矢印,尾側に下行するにつれて大腿動静脈から離れ中央部へ移行するので鼠径ヘルニアである.大腿ヘルニアは図13あたりでも大腿動静脈に近接する.)が,容易に環納される.図1で盲腸の拡張はなく小腸だけの拡張だから小腸閉塞である.腸閉塞を起こす鼠径ヘルニアは嵌頓した腸管の壁の浮腫や血腫を伴うから環納されない場合が多いので他の原因を検索すべきである.図13と図14の↑は閉鎖孔ヘルニアに嵌頓した腸管で,図10の1が閉塞部の小腸であり数字順に展開し,図9〜図11には虚脱した小腸を認める(▲).

















  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ11 【症例 RR 52】

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