上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 93 】

コンニャクによる食餌性イレウス.Small bowel obstruction due to food bolus( devil’s-tongue jelly) impaction




図4〜図9の↑は他の拡張した小腸の液状内容物よりdensityの低い内容物であり,図3の1〜図12の10まで拡張した腸管と連結し,他方では図8のA〜図12の虚脱した小腸Eへ連続するので腸閉塞の部位であり,原因である.腹部エコー検査で巨大ポリープに見えたので手術を施行した.盲腸から40cmの部位で柔らかい固形物を認め,切開摘出したら図Aのごとくコンニャクで,空腸にも同様な異物を触知した(画像省略)ので切開部まで誘導し2個のコンニャクを摘出した.









参考症例(梅干の種による腸閉塞):89歳女性.腹部手術の既往はない.前日から心窩部痛と嘔吐が続くため入院し,絶食だけで改善したので第3病日に経口摂取を再開したら腹痛と嘔吐が再発した.第5病日に改善が認められないのでCT検査を行った.図3〜図6の↑は外縁が高濃度に描出される異物と思われ,図3の1から口側の拡張した小腸へ,図6のA〜図1のFは虚脱はしていないが拡張の程度が軽く肛門側の小腸である.図3〜図6の異物(↑)が腸閉塞の原因で,不完全閉塞の所見を示している.手術で2cm大の梅干の種が回腸に嵌頓していた.図Aが術中写真で,▲が嵌頓した部位,図Bが摘出した梅干の種.









文献考察:梅干の種による食餌性イレウス
小腸狭窄部に嵌頓した梅干の種によるイレウスの1例
  Author:岡本規博(服部病院 外科), 前田耕太郎, 今津浩喜, 丸田守人
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)66巻6号 Page1338-1342(2005.06)
  Abstract:15年以上繰り返すイレウスの原因診断に難渋し,梅の種子による食餌性イレウスを契機に診断しえた1例を経験したので報告する.症例は77歳の女性で,腹痛を主訴に近医を受診し精査目的にて当院紹介となった.腹部単純X線では軽度のニボーを認め,腹部CTでは拡張した小腸と腸管内の石灰化異物が認められた.イレウス管を挿入し保存的に経過観察したが,イレウス管の進行が止まったため小腸造影を施行したところ,2ヶ所の小腸狭窄が認められ,腸管内には楕円形の陰影欠損像が認められた.小腸狭窄を伴った異物によるイレウスと診断し開腹手術を施行した.回盲弁より約40cm口側の回腸に2ヶ所の狭窄が認められ同部を切除した.切除腸管を切開したところ,数個の椎茸片と2個の硬い種子様の異物が認められ,後者は石灰化した梅干の種であることが判明した.小腸狭窄を伴い梅干の種に起因した食餌性イレウスと診断した(著者抄録).
追記:1975年から2004年までに自験例を含め81例の食餌性イレウスの報告が認められた.このうち, 植物種子によってイレウスを呈した症例は自験例を含め8例で全体の9.8%であった.さらに, 梅の種子が原因となった症例は自験例を含め5例日で6.1%であった.近年5年間では25例の食餌性イレウスが報告されており,原因食物としては餅が最も多く7例で28.0%, 次いでコンニャクの4例で16.0%であった.近年においては, 梅の種子による報告は3例で12.0%であった.

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