上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ19 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 92】

昆布巻きによる食餌性イレウス.Small bowel obstruction due to food bolus( a tangle roll ) impaction



図3〜図5の↑は小腸内糞便である.尾側へは図4〜図6の△となり虚脱した,または拡張のない小腸と連続し,他方は図4の1から拡張した腸管に連続している(図8の5と6は骨盤腔で連結するが画像は省略)ので,図3〜図5の↑の小腸内糞便が閉塞部位であり,閉塞の原因である.手術にて回腸で閉塞があり,丸くやや硬い異物を認め切開摘出したら昆布巻き(図A:術中写真▲)であった.患者は術後創感染を合併するが,食餌性イレウスの手術法は,出来れば食物塊を用手的に盲腸へ誘導(milking)すべきで,内容物見たさに切開をすべきではない.食物塊が堅くて盲腸へmilkingすると粘膜を損傷すると思われるときだけ切開摘出すべきである.






参考症例(ジャガイモによる食餌性イレウス):52歳女性.既往歴:17歳時虫垂切除.夕食(ご飯,野菜いためと豚肉の角煮)後30分経って急に間欠的な上腹部痛が出現し,徐々に間隔が短くなり腹痛の程度も増悪し来院した.体温:36.4℃,腹部は膨満しており圧痛や反跳痛,筋性防御はないが,腸雑音は亢進している.
図3〜図7の,densityの高い腸管内容物↑を移行部として図3の1〜図1の17まで拡張した小腸となり,他方では図7のAから図1のIと虚脱した小腸へ連続するから図3〜図7の腸管内容物↑が腸閉塞の原因である.図8と図9の▲も同様なdensityを示し,餅による食餌性イレウスを疑うが最近餅は食べていない.腹痛改善せず翌日開腹手術となった.盲腸から口側へ40cmの部位で閉塞があり,原因はジャガイモ4個が一塊となった食餌性イレウスであった.










文献考察:ジャガイモによる食餌性イレウス,CTで高濃度異物像
CT検査で消化管異物を認めた食餌性イレウスの1例
  Author:安藤拓也(前島病院(国保)), 大和俊信, 鈴木龍二
  Source:臨床外科(0386-9857)57巻6号 Page853-856(2002.06)
  Abstract:42歳男.間欠的な心窩部痛が出現し,夜間に痛みが増強し,嘔吐もみられたため,受診し腹部単純X線で軽度に拡張した小腸ガス像を認めた.腹部超音波で左側腹部に拡張した腸管を,腹部CTでは胃に複数の高濃度異物を認め,胃から小腸はニボーを伴う液体貯留を示した.経鼻胃管による保存的治療を行い,腹部症状は軽減し,ニボーは消失した.胃内に異物が残存するため,上部消化管内視鏡検査を行い,胃内に黄色異物を認め,鉗子で摘出するとジャガイモであった.検査後の問診からジャガイモによる食餌性イレウスと診断した.

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