上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ17 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 82】

S状結腸癌.Sigmoid colon cancer







図2〜図6は省略.図9〜図12で上行結腸(A)も下行結腸(D)も液状内容物でやや拡張しているので,下行結腸より肛門側で閉塞している可能性が高い.図13の1から追跡すると,図21の46で閉塞し,図19〜図21の↑が原因病変だが不整に造影され悪性腫瘍であることを示唆する.病変は直腸(R)と連結しS状結腸癌であろう.図16〜図18の△は腫大したリンパ節で転移性病変と思われる.図1でIVCが虚脱しており強い脱水がある.緊急手術となりS状結腸腫瘍性病変による閉塞が確認され,Hartmann手術が施行された.病理: moderately differentiated adenocarcinoma.













参考症例(S状結腸癌):63歳男性.次第に増悪する上腹部痛,腹部膨満と便秘が1週間前から続いている.腹部に圧痛はないが左下腹部に手拳大の硬い腫瘤を触知する.下行結腸(D)が液状内容物を含むので図5の1から追跡すると,図9の10で閉塞し壁肥厚を認める(↑).図5〜図8の↑は不整な造影効果を受ける腫瘤で,悪性腫瘍であろう.図3〜図6の小腸▲は壁肥厚を呈し腫瘍に巻き込まれ浸潤を示す所見である.手術で小腸と一塊となったS状結腸癌を認めた.












文献考察:閉塞性大腸癌は全大腸癌の16.2%で,73.5%に一期的切除再建術が行われた
【閉塞性大腸癌の治療】 閉塞性大腸癌における一期的切除再建術
  Author:梅木雅彦(兵庫県立淡路病院 外科), 栗栖茂, 小山隆司, 北出貴嗣, 大石達郎, 高橋英幸, 森大樹, 近清素也, 大村篤史, 田中亜希子, 杉本貴樹, 八田健
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)25巻3号 Page509-512(2005.03)
  Abstract:1985〜2002年に手術を行った初回大腸癌症例1331例のうち,閉塞性大腸癌は215例(16.2%)であった.一期的切除再建例が158例(73.5%),ハルトマン手術は42例(19.5%)で,ハルトマン手術選択は高度進行20例,全身状態不良12例,閉塞性大腸炎合併9例等であった.人工肛門のみは9例(4.2%)で,理由は高度進行が4例,後日根治術を行ったものが5例であった.直腸切断術は6例(2.8%)で,チューブ減圧後の症例が2例であった.一期的再建例の吻合方法は手縫い吻合が130例(82.3%),手術時間の短縮を図りたい場合や低位前方切除で手縫い縫合が困難な場合などに器械吻合を28例に行った.術後在院死亡は4例(1.95%)で,待機例の術後在院死亡9例(0.8%)に比べ不良であった.術後30日以内手術死亡は2例,入院死亡は2例で,死亡の原因はいずれも高度な合併症であり,残りの211例(98.1%)は軽快退院した.高齢者や高度進行例が多い閉塞性大腸癌では良好な成績と考えられた.
  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)1 【症例 GE 1】
2. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)4 【症例 GE 17〜20】

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