図９の直腸1から追跡すると図４のS状結腸13となる．図７のS状結腸５〜図７の10まで壁肥厚を呈し，図７で液貯留（腹水：※）と腹膜の肥厚（△）があり，図６と図７で，軽度だが腸間膜の浮腫があり（▲），数個の憩室（↑）を認めるので憩室炎である．10日間の抗生物質投与で治癒した．図Aは4週間後の注腸造影で，S状結腸に多数の憩室を認める（↑）．

文献考察：憩室炎の発生機序とHinchey分類
Ferzoco LB, Raptopoulos V, Silen W.
Acute diverticulitis.
N Engl J Med. 1998 May 21;338(21):1521-6.
要旨：憩室炎acute diverticulitisは憩室の穿孔（少なくともmicroperforation）による炎症である。憩室に食物残渣や糞石が存在すると憩室頚部で閉塞し、粘液分泌と細菌の過増殖により拡張し、粘膜と漿膜だけの憩室壁は虚血状態になり穿孔を起こす。多くの憩室が腸間膜内あるいは腹膜垂内やその近傍に発生するので、大部分は穿孔しても被包化され限局化される。Hinchey分類（下記）Stage3は限局したStage１またはStage２の膿瘍が穿孔し遊離腹腔内に拡がる膿による汎発性腹膜炎であるが、憩室頚部で閉塞しているので糞便が漏出することはない。Stage４は結腸内圧上昇による穿孔であり、憩室頚部での閉塞はなく、糞便が遊離腹腔内へ排出されることによる糞便性腹膜炎である。Stage３とStage４は老齢者や免疫機能の低下した者に起こりやすい。
Hinchey分類（下腹部痛シリーズResidentコースLR９の解答欄を再掲）Stage1:Confined pericolic abscess. Stage 2:Distant abscess (retroperitoneal or pelvic). Stage 3:Generalized peritonitis caused by rupture of a pericolic or pelvic abscess,"noncommunicating" with bowel lumen because of obliteration of diverticular neck by inflammation. Stage 4:Fecal peritonitis caused by free perforation of a diverticulum ("communicating").