上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ16 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 79】

上腸間膜動脈血栓症.SMA thrombosis








図1〜図5で,SMAは,腹腔動脈や門脈,SMVと比較して起始部から造影効果を認めない.図4でSMA起始部の石灰化を認め(白矢印),さらに不整脈がないことを考慮し,塞栓症ではなく血栓症と診断する.図9〜図20で▲の小腸,下行結腸(D)とS状結腸(S)以外の腸管は壁の造影効果が減弱しており虚血状態と解釈すべきである.翌日腹痛が増強し腹膜刺激症状が出現したので手術となった.小腸と右側結腸は虚血の所見を呈し,SMAは起始部で閉塞していた.Fogatyカテーテルで血栓除去(図Aが血栓)したら腸管の虚血所見は改善したので腸管切除は不要であった.血行再建術は施行しなかった.しかし,術後下血が続いたため20日後再手術を施行したら,SMA起始部で再閉塞しておりTreitz靱帯直下から空腸100cmが壊死に陥っており切除した.













参考症例(SMA血栓症):83歳女性.2日前から時々嘔吐し,当日になっても嘔吐が続きさらに腹痛が出現した.熱はなく,腹部は左下腹部に軽度の圧痛を認めるのみ.図1〜図3の腹腔動脈と比較すればわかりやすいが,図6から始まるSMAは起始部から全く造影されない.図9〜図19で▲の小腸,下行結腸(D),S状結腸(S)と直腸(R)以外の腸管は壁の造影効果が減弱しており虚血状態と解釈する.図8と図9でSMAの石灰化を認め(白矢印),起始部での閉塞だから血栓症の可能性が高い.図Aの3D画像でSMA起始部での閉塞(↑)を認め,起始部の石灰化も強く血栓症である.





















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文献考察:上腸間膜動脈血栓症の治療戦略(図)
Gastroenterol Clin North Am. 2003 Dec;32(4):1127-43. Intestinal ischemia. Burns BJ, Brandt LJ.
追記:急性上腸間膜動脈血栓症は,動脈硬化があり過去に心筋梗塞,脳血管障害や間欠的跛行を有する患者に多い.多くが数週間あるいは数ヶ月前から腹部アンギーナ(食後の腹痛)の既往がある.SMAの起始部から1〜2cmの部位で閉塞する(塞栓症は大部分が起始部から3〜8cmの部位).血管造影後塩酸パパベリンの持続動注を直ちに開始し,血栓除去だけでは再発率が高く血管再建術を施行すべきである.
  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 【症例 GR 10】

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