上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ16 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 77】

門脈・上腸間膜静脈血栓症.Portal vein・SMV thrombosis












門脈内血栓(↑)は,1週間前は図6あたりまでであったが,さらに尾側の末梢へ進展している.図16〜図24の▲の小腸は粘膜下浮腫または壁内血腫による壁肥厚を示し,図5〜図12で左側に,図19で腸間膜間に腹水を認め(※),循環障害をきたしている.入院後ヘパリン投与を始めたが,まもなく腹膜刺激症状を呈し,体温も38.7℃に上昇したので手術となった.図Aが術中所見で,約40cmの回腸が出血性壊死に陥っており,切除し端端吻合を行った.













参考症例(SMV血栓症):53歳女性.4時間前に発症した上腹部痛と嘔気のため救急搬送された.体温:35.8℃,腹部に特記すべき所見はない.図5からSMVに陰影欠損を認め(↑),かなり末梢まで伸展するSMV血栓症と思われる.図4〜図9で一部小腸の壁肥厚(▲)と,図10と図11で腸間膜の浮腫(△)を認めるが,造影効果は弱くなく,腹水もなく,循環障害はないものと判断する.ヘパリン投与だけで症状が消失した.
















拡大画像を見る

拡大画像を見る
文献考察:上腸間膜静脈血栓症,最近7年間の本邦集計44例(表,図)
2期的手術にて救命しえた上腸間膜静脈血栓症の1例
  Author:新田英利(豊橋市民病院 外科), 加藤岳人, 柴田佳久, 鈴木正臣, 尾上重巳, 長澤圭一, 吉原基, 渡辺健次, 田口泰郎, 伊藤貴明
  Source:日本消化器外科学会雑誌(0386-9768)38巻10号 Page1602-1606(2005.10)
  Abstract:急性腹症を示すまれな疾患である上腸間膜静脈血栓症の1例を報告する.症例は22歳の男性で,上腹部痛にて来院し,CT,血管造影検査にて上腸間膜静脈血栓症と診断された.入院後,すぐに抗凝固療法を開始するも次第に症状は増悪し,3日目に上腸間膜静脈血栓症による腸管壊死を疑い,緊急手術を施行した.約180cmにわたり壊死小腸を切除した.術中,辺縁静脈に血栓の残存を認めたため再発,縫合不全を危ぐし両側腸管を盲端のまま閉腹し,2期的手術を予定し終了した.2日後,再開腹し腸管壊死の徴候はなく盲端を吻合した.術後経過は良好で術後22日目に退院した(著者抄録) .
  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 【症例 GR 9】

 【 ←前の問題 】   【 次の問題→ 】  【 このシリーズの問題一覧に戻る 】 【 演習問題一覧に戻る 】