文献考察:急性上腸間膜動脈閉塞症.死亡率は32%. 急性上腸間膜動脈閉塞症37例の検討
Author:田畑峯雄(鹿児島市医師会病院), 渋谷寛, 大迫政彦, 坂元弘人, 溝内十郎, 迫田晃郎, 矢野武志, 島田受理夫, 内園均
Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)21巻3号 Page489-497(2001.03)
Abstract:急性上腸間膜動脈閉塞症37例の診断と治療成績について検討した.平均75歳で,心血管系疾患を94%が有し,35%がショックで来院した.LDH高値を89%,アシドーシスを30%に認めた.CT検査で18例中15例,臨床所見で10例が診断可能であった.治療法は動注療法4例中2例が血栓溶解,壊死腸管切除33例中20例が残存小腸70cm以下,全腸壊死の2例が試験開腹であった.在院死亡率は32%で,ショック,アシドーシス,基礎疾患複数合併,全結腸壊死合併では予後不良であった.耐術例の1年以内の早期死亡は7例で,平均82歳,残存小腸50cm以下4例であった.長期生存は18例で平均71歳,残存小腸70cm以下7例であった.以上より,心血管疾患を有する高齢者を本症のハイリスク群として認識し,CT検査による早期診断とショックに陥る前の治療が必要と思われた. 追記:最近のヘリカルCTは呼吸停止不能なpoor risk症例でも良質な画像が得られ, 血管病変の評価も可能である.CTによるSMA本幹の同定は起始部より7〜8cm尾側のスライス,すなわち本症の好発部位である中結腸ないし右結腸動脈分岐部付近までは可能である.SMAの血栓ないし塞栓は, 単純CTでは新鮮血栓はhigh density, 造影CTではSMAの相対的陰影欠損として描出される.SMA起始部から中ないし右結腸動脈分岐部付近までのSMA閉塞例は全例に造影CTで閉塞所見が得られた.腸管壊死に陥った場合は造影CTで腸管の造影効果不良所見が高頻度に認められ, 動注血栓溶解例では腸管の造影効果は良好であった.造影CTはSMAの閉塞部位と腸管の虚血状態を推測することが可能であり, 治療方針の指標になりうると考えられた.
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