下腹部痛シリーズ(Lower Abdominal Pain) 6 RESIDENT COURSE 解答 【症例 LR 26】

S状結腸憩室炎.sigmoid diverticulitis




図7の1の直腸からの追跡はS状結腸が短縮している(下記)ため容易であり,図1の下行結腸13となる.下記のとうりS状結腸の壁は憩室発生の段階ですでに肥厚するので,壁肥厚以外の所見を認めてはじめてS状結腸憩室炎の診断がつく.図5の5〜図5の9のS状結腸は壁肥厚を呈し,↑は憩室である可能性が高い.図5と図6のS状結腸右側の脂肪組織は腹壁直下の大網と比較して濃度上昇しており(▲),図5〜図7では腹膜の肥厚が著明で(△),S状結腸憩室炎である.図5の白矢印は遊離ガスか憩室か微妙な所見である.8日間の抗生物質投与で症状が消失した.



文献考察:S状結腸憩室の発生機序
1)北郷邦昭, 河相開流, 竹内浩紀, 坂田秀人, 辻美隆, 松木盛行, 浜田節雄, 平山廉三 
【大腸の非腫瘍性疾患 外科医のための診療指針】 結腸憩室症と結腸憩室疾患  
臨床外科54巻13号 Page1541-1546(1999.12)

2)Ferzoco LB, Raptopoulos V, Silen W.
Acute diverticulitis.
N Engl J Med. 1998 May 21;338(21):1521-6.

要旨:大腸憩室は長年の低残渣食摂取の結果、腸管の異常運動を起こし慢性的に内圧が上昇し、ストレスによる大腸の緊張増加や、肥満(大腸壁貫通血管周囲の脂肪組織の増加が憩室形成を助長)などの要因も加わり、抵抗の弱い結腸壁の血管貫通部で粘膜が嚢状に突出して形成されると言われる。その結果憩室を有する腸管の厚さは増し、長さは短縮し内腔は狭窄する。右側型においても同様な機序で発生すると考えられているが、繊維成分に富む食生活をしている(あるいは「していた」)日本や東アジアに多いこと、20歳代にも多発すること、筋層の肥厚が著明でないことなどの相違点は解明されていない。

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