上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ16 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 78】

上腸間膜動脈塞栓症.SMA embolism












図1〜図3でかなり末梢で肝内胆管を認める(白矢印)ので拡張していると解釈すべきで,図4〜図8で総胆管(CBD)が明らかな拡張を示しているので胆管炎と診断された.しかし,図9からSMAが造影されなくなり(↑)閉塞を示唆する極めて大事な所見がある.下段の下腹部で図19〜図21の直腸(R)とS状結腸(S)と比較して腸管壁の造影効果にはっきりした差違を認めず腸管の虚血所見は指摘できないが,SMA塞栓症は死亡率のきわめて高い疾患だから血管造影の適応である.翌日のCT(図22〜図24)でviableな空腸(▲)と下行結腸(D)以外は壁の造影効果を認めず,図23の△は盲腸の壁内気腫を示し,腸管壊死または高度虚血の所見である.手術でTreitz靱帯の尾側90cmの部位から横行結腸中央部まで壊死に陥っていた(図A).中結腸動脈起始部より中枢側で脈拍を触れなくなり塞栓症と思われた.総胆管結石を認めず拡張の原因は不明のまま5日後に死亡した.













文献考察:上腸間膜動脈塞栓症の治療戦略
Gastroenterol Clin North Am. 2003 Dec;32(4):1127-43. Intestinal ischemia. Burns BJ, Brandt LJ.
要旨:上腸間膜動脈塞栓症(SMA embolism)は腸間膜虚血症の50%を占める.治療方針は,閉塞部位がileocolic arteryより中枢側(major embolus)か遠位側またはSMAの分枝(minor embolus)か,完全閉塞か部分的閉塞か,腹膜刺激症状の有無による(図).SMAが塞栓で閉塞すると閉塞部末梢の血管だけでなく非閉塞部の血管まで強いvasoconstrictionを起こす.そのvasoconstrictionをpapaverineで拡張させる治療法は極めて大事な要素であり,留置したSMAカテーテルに術前から30〜60mg/hで注入する.溶解療法はminor embolus,部分的閉塞例や発症から12時間以内の症例で成功する可能性がある.

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  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)2 【症例 GR 6】

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