上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ16 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 76 】

門脈血栓症.Portal vein thrombosis












単純CTでは門脈は図1の大動脈と同濃度を呈するはずである.図1〜図10の高濃度の↑は新鮮な血栓であり,門脈の走行に一致するから門脈血栓症である.血栓の濃度は血栓形成からの時期によって変化するので単純CTで高濃度に描出される血栓はむしろまれである.図12は中腹部のCTだが腸管の壁肥厚や腹水などの異常所見を認めない.CBD:総胆管.
下段の造影CTでは図15と図16の左門脈(PV)は側副路から血流を受けて開存している.図16〜図24の↑は造影効果を受けず上段の単純CTの高濃度化した血栓と一致し,血栓で閉塞した右門脈である.さらに尾側へ追跡すると図24の門脈まで血栓が続き(↑),図25のSMVからは造影され開存している.造影効果の強い肝右葉は門脈が閉塞しているために代償性に動脈が拡張し,動脈相で血流が増えている現象である.中枢側だけの門脈血栓だから側副路が多いために腸管の循環障害は認めない.





















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文献考察1):上腸間膜静脈血栓症,本邦集計112例(表)
上腸間膜静脈血栓症の1例
  Author:上原圭介(名古屋第二赤十字病院), 長谷川洋, 小木曽清二, 塩見正哉, 籾山正人, 伊神剛
  Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)60巻11号 Page3006-3010(1999.11)
  Abstract:65歳男.イレウスの診断で保存的治療施行中に腹痛が増強,腹部造影CTにて上腸間膜静脈内に血栓を認め,上腸間膜静脈血栓症による小腸壊死を疑い,発症6日目に手術を施行した.開腹すると血性腹水と壊死空腸を認め,約100cmの空腸を切除し,上腸間膜静脈本幹内血栓に対し,血栓除去を施行した.上腸間膜静脈本幹内血栓の再発は術後早期に認められたが,側副血行路の発達により肝への門脈血流は正常に保たれ,血栓除去は必ずしも必要ではなかったと考えられた.逆に辺縁静脈に沿う血栓を残したことにより縫合不全をきたしたと考えられたことから,本症の治療には辺縁静脈に沿う血栓の完全摘出が重要と考えられた.
追記:術前診断がなされたものは49.1%だが,1990年以前は22.8%であったのに対し,1991年以降は76.3%とCTや腹部エコーなどの画像診断の進歩による診断率の著明な向上が見られた.

文献考察2):レントゲン上原因不明(膵炎,肝癌,膵癌,門脈血栓症と門脈圧亢進症を除く)の上腸間膜静脈血栓症43例.誘因は最近の手術,感染と凝固機能亢進.腸管虚血は21%に見られ,死亡率は低く7%
AJR Am J Roentgenol. 2001 Oct;177(4):837-41.
Superior mesenteric vein thrombosis with radiologically occult cause: a retrospective study of 43 cases.
Warshauer DM, Lee JK, Mauro MA, White GC 2nd.

OBJECTIVE: Our purpose was to examine the clinical presentation, imaging appearance, etiology, and clinical outcome in patients who had acute thrombosis of the superior mesenteric vein with radiologically occult cause. CONCLUSION: The most common predisposing factors in superior mesenteric vein thrombosis with radiologically occult cause are recent abdominal surgery, infection, and hypercoagulable states. Although no correlation was noted between risk factor and outcome, the presence of bowel wall thickening and mesenteric congestion on CT or MR imaging was associated with the development of bowel ischemia. Prognosis is good in this group of patients, with a mortality of only 7%, although bowel ischemia was noted in 21%. PMID: 11566684(full text)
  【参照症例】   1. 腹部全体痛シリーズ(Generalized Abdominal Pain)7 【症例 GR 34】

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