上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ15 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 74】

魚骨による十二指腸穿孔.Perforation of duodenum with a fish bone






図1〜図7で腹壁直下に遊離ガスがあり(▲),図7〜図10で魚骨と思われる高濃度の線状異物(↑)を認める.魚骨は十二指腸球部から胃前庭部にまたがり,十二指腸か胃の穿孔と診断する.手術で魚骨による十二指腸球部前壁の穿孔を認めた.





参考症例(PTPによる十二指腸穿孔):老健施設に入所中の92歳男性.前日からの上腹部痛と発熱のため来院.体温:38.0℃,上腹部に圧痛と反跳痛がある.図1〜図7で遊離ガスがある(▲).図8と図9で十二指腸(Du)周囲脂肪組織の炎症所見があり(△),十二指腸壁の肥厚を認めるので十二指腸潰瘍の穿孔と診断したが,内視鏡検査にて十二指腸内にロキソニンのPTP(press-through pack:薬剤包装容器,図A:白矢印)が発見された.図6と図7の↑が十二指腸内から一部膵頭部へ貫通したPTPと思われる.内視鏡下に摘出し,抗生物質投与で治癒した.










文献考察1):魚骨による十二指腸穿通,本邦集計10例(表1)
誤嚥魚骨の十二指腸穿通による腸間膜膿瘍の1例
  Author:中澤哲(東京女子医科大学 第二外科), 瀬下明良, 小川真平, 板橋道朗, 城谷典保, 亀岡信悟
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)23巻4号 Page643-647(2003.05)
  Abstract:48歳男.臍周囲痛,発熱を主訴とした.4ヵ月来の腹痛を繰り返し,徐々に増強し発熱も加わり,体温39.5度,臍周囲に圧痛を有する固い腫瘤を触知した.超音波検査,CTで十二指腸水平脚に接し,内部に線状の石灰化様陰影を伴う腫瘤を認めた.病歴聴取で鯛を摂取したことが判明し,魚骨の十二指腸穿通による腸間膜膿瘍を強く疑い,手術を施行した.開腹時,腸間膜根部に鶏卵大の腫瘤を認め,頭側は十二指腸水平脚に接しており,超音波ガイド下に上腸間膜動静脈を避け,内腔より2cmの魚骨を摘出し,膿瘍を開放しドレナージした.術後全身状態は速やかに改善し,治癒した.検索し得た限りでは,魚骨による十二指腸穿孔・穿通の報告例は極めて少なく自験例を含め10例に過ぎなかった.

文献考察2):魚骨による十二指腸穿通,本邦集計13例(表2)
CT検査により術前診断しえた魚骨による十二指腸穿通の1例
  Author:文元雄一(日本生命済生会附属日生病院 外科), 井上善文, 吉川幸伸, 桂浩, 野村昌哉, 宗田滋夫
  Source:手術(0037-4423)58巻7号 Page1217-1219(2004.06)
  Abstract:70歳女性.患者は上部腹痛を主訴とした.入院時,心窩部から右季肋部に圧痛・反跳痛を認め,血液検査にて炎症マーカーの上昇がみられた.保存的治療にて経過観察を行ったところ,入院2日目の腹部CTで十二指腸水平脚に穿通する3cm長のV字型石灰像と後腹膜腔側のガス像を認めた.患者の食事歴から,魚骨による十二指腸穿通と診断し,緊急開腹術を行い,魚骨を摘出した.術後経過は良好であった.

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  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ9 【症例 RE 41】
2. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ9 【症例 RE 42】

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