上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ15 RESIDENT COURSE 解答 【症例 ER 75】

異物によるS状結腸穿孔.Sigmoid colon perforation by a foreign body



図1〜図7で遊離ガスがある(▲)が,腹壁直下以外の遊離ガスはその近辺の腸管の穿孔を意味する場合が多い.図4〜図6の↑は異物(石灰分の少ない魚骨?)と思われ,図6ではS状結腸(S)の壁外へ突き出ている.図4〜図6のS状結腸は壁肥厚を呈し,図5と図6で脂肪組織の濃度上昇を示し(白矢印),図8と図9で腹水(※)を認め,異物によるS状結腸穿孔である.R:直腸.十二指腸潰瘍の既往があり,上腹部痛を訴え,上腹部に圧痛を認めたので十二指腸潰瘍穿孔と診断され抗生物質投与で保存的に治癒した.Follow-up CTは撮られていないが,異物は腸管外に,または便とともに排出されたと推測する.







参考症例(魚骨による膿瘍): 71歳女性.4日前に上腹部痛と発熱が出現し,当日になっても症状軽減せず,臍上部に腫瘤を触れる様になり来院.体温:38.9℃.図2〜図5の円形病変▲は図1と図6で盲端となり、周囲脂肪組織の濃度上昇を伴い(△)膿瘍と思われる.翌日の造影CT(図7〜図11)で多房性の壁が強く造影され,内腔は造影されず低濃度となり膿瘍の診断が容易となる.その原因は? 図4の↑は腸管外に排出された魚骨と思われ,膿瘍の原因であろう.図7〜図11の造影CTでは魚骨は認識できない.抗生物質投与で治療されたが,1週間後膿瘍は皮下に進展したため切開排膿し治癒した.図12〜図15は治癒後のCTで,白矢印が腹腔内の肉芽に残存した魚骨と思われる.
















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文献考察:魚骨による消化管穿孔の穿孔部位(表)
術前にCTで診断できた,魚骨による下行結腸穿通の1例
  Author:團野克樹(八尾市立病院 外科), 福島幸男
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)24巻7号 Page1179-1182(2004.11)
  Abstract:85歳女性.患者は左下腹部痛を主訴に救急搬送となった.入院時,左下腹部に限局する圧痛,反跳痛を認め,腹部X線では小腸ガスの増加を認めた.腹部CTで下行結腸背側の後腹膜腔で膿瘍像を認め,腸管壁との境界部には約3cmの高吸収域を示す異物がみられた.詳細な問診の結果,2日前の夕食に鯛のあら炊きを食べていることが判明し,魚骨による下行結腸穿孔との診断のもと,緊急開腹術を行い,膿瘍ドレナージ後に下行結腸部分切除を施行した.摘出標本では,下行結腸穿通部に突き刺さる鯛の顎骨が確認された.術後経過良好で,術後22日目に退院した.
  【参照症例】   1. 右下腹部痛(Right Lower Quadrant Pain)シリーズ9 【症例 RR 44】

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