上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ14 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 68】

肝扁平上皮癌の胃穿破・腎腫瘍.Fistula between hepatic basal cell carcinoma and stomach・renal tumor.










上の図1〜図10で肝左葉に大きな嚢胞性病変を,図9と図10では左腎に腫瘍性病変を認める.入院後発熱が出現したので肝膿瘍と診断し抗生剤を投与した.1週間で解熱し腎腫瘍精査のため泌尿器科へ転科したが,再度発熱が出現しCT検査を行ったのが下段の図11〜図20.嚢胞性病変はやや増大しガスを含むので膿瘍と診断しドレナージを施行したら胆汁が得られ,培養でKlebsiella とBacteroidesが検出された.膿瘍腔造影で胃との交通を示し(図A),内視鏡検査で瘻孔を認め(図B:△),瘻孔部の生検で扁平上皮癌と診断された.腫瘍中心性壊死部の感染,または膿瘍に類似する腫瘍性病変があることを忘れてはならない.大量の吐血・下血とDICを合併し死亡した.Retrospectiveに見れば図4と図5の↑は腫瘍による胃壁の浸潤像である.












参考症例(sarcomatoid hepatoma):64歳男性.2ヶ月前から右季肋部痛があり,2日前に増強し,微熱もあり来院.体温:37.3℃,腹部エコー検査で肝膿瘍と診断されドレナージされたが血性膿が少量しか吸引されずCT検査(上段が単純,下段が造影CT)を行った.大きな嚢胞性病変だが造影効果を受ける部分が多く鑑別診断に腫瘍も考慮すべきである.手術による生検でsarcomatoid hepatomaと診断された.










文献考察:膿瘍類似腫瘍性病変
【肝胆膵領域の画像診断】 肝疾患 肝嚢胞性疾患の診断 感染症を含む(解説/特集)
  Author:山田哲(信州大学 医学部放射線科), 角谷眞澄
  Source:臨床放射線(0009-9252)49巻11号 Page1414-1425(2004.10)
要旨:1)胆管嚢胞腺腫・嚢胞腺癌biliary cystadenoma, cystadenocarcinoma.胆管嚢胞腺腫は, 胆管上皮を起源とする肝嚢胞性腫瘤全体の5%以下を占めるに過ぎないまれな病変である.成長速度は遅く, 多房性を呈する.多くは肝内に存在する(85%)が, 肝外の病変も報告されている.腫瘍径は最小1.5cmから最大35cm, 中年女性(平均年齢38歳)に好発し, 前癌病変であると考えられている.CTでは明瞭な厚い線維被膜を有する孤立性の低濃度腫瘤として描出されるが, 内容物の性状により濃度は一定しない.壁在結節や内部の隔壁はUSで明瞭に描出される.被膜の石灰化はほとんどみられない.
2)原発性肝腫瘍の嚢胞化cystic subtypes of primary liver neoplasms.原発性肝腫瘍の嚢胞化は比較的まれであり, 通常は急速な腫瘍増大あるいは全身および局所的な治療に伴う内部壊死と関連している.まれにではあるが完全あるいは部分的な嚢胞性腫瘤の像を呈する代表的な原発性肝腫瘍としては肝細胞癌と巨大海綿状血管腫がある. 
3)嚢胞性転移cystic metastases.肝転移も本来は充実性であるが, ときに画像で完全あるいは部分的に嚢胞性の所見を呈することがある.肝転移の嚢胞化の成因として一般に2つの異なった病的機序が考えられている.急激な増大を示す多血性転移性腫瘍が壊死をきたし嚢胞状変性に至ることがある. 神経内分泌腫瘍, 肉腫, 肺癌, 乳癌, 悪性黒色腫などの肝転移巣でしばしば認められる.また喉頭癌や食道癌などの扁平上皮癌でも肝転移が嚢胞化することがある.

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