文献考察:膿瘍類似腫瘍性病変
【肝胆膵領域の画像診断】 肝疾患 肝嚢胞性疾患の診断 感染症を含む(解説/特集)
Author:山田哲(信州大学 医学部放射線科), 角谷眞澄
Source:臨床放射線(0009-9252)49巻11号 Page1414-1425(2004.10) 要旨:1)胆管嚢胞腺腫・嚢胞腺癌biliary cystadenoma, cystadenocarcinoma.胆管嚢胞腺腫は, 胆管上皮を起源とする肝嚢胞性腫瘤全体の5%以下を占めるに過ぎないまれな病変である.成長速度は遅く, 多房性を呈する.多くは肝内に存在する(85%)が, 肝外の病変も報告されている.腫瘍径は最小1.5cmから最大35cm, 中年女性(平均年齢38歳)に好発し, 前癌病変であると考えられている.CTでは明瞭な厚い線維被膜を有する孤立性の低濃度腫瘤として描出されるが, 内容物の性状により濃度は一定しない.壁在結節や内部の隔壁はUSで明瞭に描出される.被膜の石灰化はほとんどみられない.
2)原発性肝腫瘍の嚢胞化cystic subtypes of primary liver neoplasms.原発性肝腫瘍の嚢胞化は比較的まれであり, 通常は急速な腫瘍増大あるいは全身および局所的な治療に伴う内部壊死と関連している.まれにではあるが完全あるいは部分的な嚢胞性腫瘤の像を呈する代表的な原発性肝腫瘍としては肝細胞癌と巨大海綿状血管腫がある.
3)嚢胞性転移cystic metastases.肝転移も本来は充実性であるが, ときに画像で完全あるいは部分的に嚢胞性の所見を呈することがある.肝転移の嚢胞化の成因として一般に2つの異なった病的機序が考えられている.急激な増大を示す多血性転移性腫瘍が壊死をきたし嚢胞状変性に至ることがある. 神経内分泌腫瘍, 肉腫, 肺癌, 乳癌, 悪性黒色腫などの肝転移巣でしばしば認められる.また喉頭癌や食道癌などの扁平上皮癌でも肝転移が嚢胞化することがある.
|