上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ13 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 65】

輸入脚症候群・十二指腸穿孔.Afferent loop syndrome with duodenal perforation








膵周囲に相当量の液貯留がある(▲)が急性膵炎ではない.その根拠は,1:膵臓(△)は腫大がなく,膵実質は均一、辺縁は明瞭で,脾臓と同等に造影され膵臓実質に異常を認めない.この程度の液貯留を伴う膵炎なら膵の造影不良とか膵実質の不均一や辺縁の不明瞭化の所見があるべきである.2:液貯留だけ目立ち浮腫所見が極めて軽い.3:図5の1がB-II再建の十二指腸断端で,そこから肛門側へ追跡すると図13の26,すなわち胃空腸吻合部で盲端になり,1〜26の輸入脚(afferent loop)以外の腸管には拡張がない.従って,輸入脚症候群(afferent loop syndrome)による十二指腸の穿孔を疑う.手術所見:胃空腸吻合部背側へ空腸が嵌入して内ヘルニアを形成し,輸入脚が後方から圧排され閉塞し,さらに十二指腸水平部の穿孔を認めた.








文献考察1):急性輸入脚閉塞症による輸入脚穿孔例16例の本邦集計,死亡率は25%.早期診断と早期手術が必要
胃切除(B-II法)術後8年の経過中,輸入脚に急性壊死穿孔を生じた1例
  Author:長谷川誠(帝京大学医学部附属市原病院 外科), 永嶌嘉嗣, 小沢邦寿, 他
  Source:日本臨床外科医学会雑誌(0386-9776)58巻10号 Page2331-2337

文献考察2):80例の本邦集計から,非穿孔例の死亡率は13%,穿孔例の死亡率は39%.診断がつき次第,閉塞輸入脚減圧の外科的処置が必要である
胃切除後急性輸入脚閉塞症の一例と本邦報告80例についての検討
  Author:浦田尚巳(近畿大学 第2外科), 森下明彦, 上田省三, 他
  Source:外科治療(0433-2644)63巻4号 Page462-464(1990.10)

文献考察3):本邦集計41例,非穿孔例の死亡率は11.5%,穿孔例の死亡率は26.7%.診断がつき次第,閉塞輸入脚減圧の外科的処置が必要である
十二指腸穿孔を伴った輸入脚閉塞症に対し空腸瘻からの減圧チューブドレナージを施行した1手術例
  Author:外浦功(下都賀総合病院(厚生連) 外科), 川村功, 山崎一馬, 児玉多曜, 森川丘道, 飛田浩司, 松永晃直, 落合武徳
  Source:日本腹部救急医学会雑誌(1340-2242)24巻5号 Page969-974(2004.07)

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