文献考察:Groove pancreatitis
1)【肝胆膵領域における腫瘍性病変の画像と病理】 腫瘤形成性非腫瘍病変 膵臓 Groove pancreatitis(解説/特集)
Author:片岡慶正(京都府立医科大学 消化器病態制御学), 元好朋子, 阪上順一, 光藤章二, 森本泰隆, 谷野眞通, 中條忍, 岡上武
Source:肝・胆・膵(0389-4991)49巻5号 Page879-883(2004.11) 要旨:解剖学的にGroove領域とは十二指腸下行脚と膵頭部, 総胆管に囲まれた溝と定義されており, 同部位には胃十二指腸動脈が走行する. Groove pancreatitisとは「Groove領域を中心とした限局性の慢性膵炎」であり, その解剖学的特異性から特徴的な臨床像を呈することが多い. 病変がgroove限局性で, 他の膵実質に異常を認めないpure formとgroove領域の病変が主体ではあるが, 連続した膵頭部背側にも膵炎の波及がみられるsegmental formに分類される. Groove pancreatitisは男性に多く,80 %が大酒家である. 本邦では大酒を含めた何らかの飲酒歴が94%との報告がある.
発症機序は不明であるが, 長期に及ぶアルコール摂取が, 十二指腸Brunner腺過形成や粘稠度の高い膵液分泌を誘発し, 膵液の流出障害, 特に副膵管領域の膵液うっ滞(damming back)の結果, groove領域に炎症を生じると推察されている. Groove pancreatitisは一見して, 進行した膵頭部領域の悪性腫瘍を想定させる画像を示すこともあるが, 内科的保存療法で完治可能な症例も増加しており, 臨床上常に念頭に置く必要性のある稀な疾患である.
2)AJR Am J Roentgenol. 2004 Sep;183(3):839-46. Normal anatomy and disease processes of the pancreatoduodenal groove: imaging features.
Yu J, Fulcher AS, Turner MA, Halvorsen RA. PMID: 15333380
解剖は(図)参照.CT所見:十二指腸の壁肥厚,その肥厚した壁に嚢胞性病変,造影CTで早期相は造影不良,後期相で遅延性に造影される.悪性腫瘍との鑑別が困難なことがある.
3)十二指腸閉塞を呈したgroove pancreatitisと思われた1例
Author:五十嵐章(聖隷吉原病院 外科), 伊藤孝, 稲葉圭介, 清水亨
Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)64巻9号 Page2271-2276(2003.09) 要旨:本邦集計29例(表)で,男女比は25:4と圧倒的に男性に多く,年齢は33〜70歳(平均:49.3歳).飲酒歴は68%に認められ,治療は22例に膵頭十二指腸切除が行われていた.
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