文献考察:腫瘤形成性膵炎と膵癌との鑑別
1)【膵癌と鑑別を要する慢性膵炎】 腫瘤を形成する慢性膵炎 Dynamic CTによる鑑別診断
Author:山口武人(千葉大学 大学院 腫瘍内科), 松浦直孝, 石原武, 税所宏光
Source:胆と膵(0388-9408)23巻8号 Page653-657(2002.08)
Abstract:画像診断上, 膵癌と鑑別を要する慢性膵炎, 腫瘤形成性膵炎についてDynamic CTによる鑑別に関して検討した. 造影早期相で腫瘤部は膵癌では94%が造影不良な淡染を呈したが, 腫瘤形成性膵炎では85%は非腫瘤部と同等の等染であり, 両疾患鑑別の為の重要な所見であった. 淡染内不染域(早期相),腫瘤周囲の点状・線状濃染,帯状濃染および濃染の5所見は膵癌に特異的な所見であり, 腫瘤の淡染像に加えて鑑別に有用であった. 径20mm以下の膵癌では後期相の濃染が70%に認められ, 21mm以上の20%と比べ高頻度であり, 小膵癌診断に有用な所見と考えられた.
2)【胆膵診療のEBMをめざして】 腫瘤形成性膵炎 診断は可能か
Author:朝倉徹(東北大学 大学院 消化器病態), 山極哲也, 下瀬川徹
Source:胆と膵(0388-9408)21巻12号 Page1005-1011(2000.12)
Abstract:腫瘤形成性膵炎の診断が可能であるかについて, 画像診断法を中心にレビューした. これ迄の報告では病理組織学上, 本症は慢性膵炎を背景に局所的腫大や腫瘤像を呈するものと, 慢性膵炎とは関係なくリンパ球浸潤と小葉内外の線維化をきたす炎症性腫瘤がある. 膵癌と比較するとUS或いはEUSでは膵管穿通像や点状高エコー又は腫瘤周囲の高エコー等の出現率が高く, またCTでは背景膵とほぼ同様の造影効果がある場合に本症の可能性が高い. 更にERCPによる膵管像では腫瘤による狭窄がないか, あってもなだらかで分枝膵管が造影されてくる場合には本症を疑うべきである. しかしいずれも確診を得る迄の所見とは言い難く, 非典型的画像所見を呈する場合の診断は困難である.
3)癌との鑑別が困難であった慢性膵炎手術症例の検討
Author:志摩泰生(高知県立中央病院), 堀見忠司, 石川忠則, 森田荘二郎, 岡林孝弘, 西岡豊, 濱田円, 渋谷祐一, 尾崎和彦, 岩田純
Source:外科(0016-593X)65巻13号 Page1709-1712(2003.12)
Abstract:癌との鑑別を要した慢性膵炎手術症例29例(男26例,女3例,平均55.0歳)と膵癌手術症例34例(男21例,女13例,平均64.1歳)とを比較し, 両者の鑑別点について, 年齢, 性比, 腫瘍マーカー, 画像診断について検討した. その結果,腫瘍マーカーでは,CA19-9が膵炎では全例100U/ml以下であるのに対し, 膵癌では81%の患者が100U/ml以上であった. 膵炎では狭窄部の尾側膵管径は全て6mm以内で, 膵炎の尾側膵管径が平均3.5mmであるのに対し, 膵癌では平均5.7mmで有意に膵癌で拡張を認め, 有用な所見と考えられた. 造影CTでは, 腫瘤形成性膵炎の症例は周囲膵組織と同様に造影効果を認めることが多かった.
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