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文献考察:Lemmel 症候群
1)【知っておくべき疾患 十二指腸】 Lemmel症候群
Author:相原司(防衛医科大学校 第1外科), 初瀬一夫, 望月英隆
Source:臨床消化器内科(0911-601X)15巻9号 Page1223-1229(2000.07) 要旨:十二指腸傍乳頭部憩室には, Lemmelが報告したpapillen syndromeに示されるように肝, 胆道, 膵に影響を及ぼすものが存在する.その後のLemmel症候群の解釈は傍乳頭部憩室そのものが機能的, 機械的に黄疸や膵炎を惹起する症候群で, 胆石症, 胆嚢炎などを含まないとする場合が多い.その病態は傍乳頭部憩室が存在するとOddi筋の機能の低下により胆道膵管系に逆行性感染が生じ, 肝胆膵障害をきたすと考えられる.憩室自体に対する手術の適応には, 憩室の胆道への影響の程度を術前に正確に評価しうる方法論の確立が望まれる.また, 傍乳頭部憩室を併存する総胆管結石に対して内視鏡的治療を行った後の長期観察例の検討が待たれる.
2)【最新の胆道炎治療】 Mirizzi症候群とLemmel症候群
Author:染谷哲史(札幌医科大学 医学部第一外科), 木村康利, 曽ヶ端克哉, 野村裕紀, 秦史壮, 桂巻正, 平田公一
Source:消化器外科(0387-2645)27巻13号 Page1915-1923(2004.12) 要旨:十二指腸憩室は剖検例の約20%に認められ, 約80%が下行脚に存在するといわれる.また, 加齢とともに発生頻度が高くなるとされる.傍乳頭の領域については通常乳頭を中心として半径2-3cm以内, もしくは1-2本の輪状ヒダ以内とする意見が多い.この領域での憩室は全十二指腸憩室の約70%を占めるとされ, 臨床的意義も大きい.傍十二指腸憩室を有する症例のうち, 胆嚢結石合併率は約30%, 総胆管結石の合併率は約45%と報告されている.一方, 急性膵炎の合併率は約12%, 慢性膵炎の合併率は約5%と報告されている.膵炎の合併率は比較的低頻度となっているが, 主膵管の拡張や壁不整などERP上の陽性所見はほぼ30%に達する.胆道疾患・膵疾患いずれも憩室を有さないものより発生頻度が高い.この要因として, 1)傍乳頭憩室自体もしくは食物残渣の憩室内残留による胆管および膵管の圧迫, 2)反復する憩室炎の波及による乳頭の機能不全, があげられる.
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