文献考察:膵仮性嚢胞の消化管穿通例,本邦集計8例(表) 上部消化管出血を合併した仮性膵嚢胞胃穿通に対して胃全摘術を施行した1例
Author:志田敦男(東京慈恵会医科大学 外科), 山寺仁, 中林幸夫, 石田祐一, 穴澤貞夫, 山崎洋次
Source:日本臨床外科学会雑誌(1345-2843)62巻12号 Page2900-2904(2001.12)
Abstract:48歳男.数年前より,他院にて,仮性膵嚢胞の存在を指摘されていたが,放置していた.1ヵ月前より咳嗽と発熱が,次第に呼吸困難も出現した.胸部単純X線写真では左胸水を認めた.腹部CTでは直径6cm大の仮性膵嚢胞を認めた.血液生化学的検査により,慢性膵炎の急性増悪と診断し,保存的に治療した.しかし,第20病日に吐血し,胃内視鏡による止血は困難で,開腹手術を行った.術中診断で仮性膵嚢胞の胃体上部後壁への直接穿通を確認し,胃全摘術を行った.術後2年6ヵ月現在の経過は良好である. 追記:慢性膵炎には約10〜15%に仮性嚢胞が合併するといわれるが,その約30%に膿瘍形成,穿孔や出血(消化管出血,腹腔内出血,嚢胞内出血)などの合併症が発生する.出血は全合併症の10%を占め,死亡率は25〜40%と報告されている重篤な合併症である.嚢胞内出血の発生機序は,1.消化液の嚢胞内逆流により活性化された膵酵素が,嚢胞壁の微小血管壁を融解し出血する,2.嚢胞内圧上昇による,3.膵の炎症が隣接動静脈に波及し仮性動脈瘤を形成し,それが嚢胞内に破裂する,などの機序がいわれている. 1972年以降に本邦で仮性嚢胞が消化管穿通を起こした報告は8例である.
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