上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ12 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 57】

仮性動脈瘤.pseudoaneurysm



図11〜図14の↑は腹部大動脈や下大静脈と同等に造影されているので血管である.解剖学的に膵頭部の前方にこの大きさの血管は存在しないので瘤(aneurysm)であるが,静脈瘤は極めて希なので膵十二指腸動脈系の動脈瘤と解釈し,膵炎の合併症として発生した仮性動脈瘤(pseudoaneurysm)である.図Aは血管撮影で▲が動脈瘤.塞栓術は技術的に成功せず手術にて切除された.






参考症例(慢性膵炎・胃十二指腸動脈瘤):61歳男性.アルコール性慢性膵炎の既往があるが5年ぶりに上腹部痛のため来院した.図9で膵頭部(H)に石灰化を認め,図1〜図5で膵管が拡張しており(△)慢性膵炎がある.図1〜図8の↑は動脈瘤と思われるが,拡張した膵管との関係から膵臓背側に位置するようで,胃十二指腸動脈またはその分枝の動脈瘤の可能性が高い.血管造影(図A)で胃十二指腸動脈(GDA:Gastro-Duodenal Artery)から発生した動脈瘤と診断され,GDAをコイルで塞栓した.










文献考察:膵炎に伴う仮性動脈瘤
JOP. 2004 Sep 10;5(5):328-37.
Vascular complications of pancreatitis.
Mallick IH, Winslet MC. Review.PMID: 15365199(full text)
仮性動脈瘤(pseudoaneurysm):膵炎の3.5〜10%に発生する.発生部位は脾動脈:40%,胃十二指腸動脈:30%,膵十二指腸動脈:20%,胃動脈:5%,肝動脈:2%,その他(SMA,空腸,回盲部,大動脈):1〜3%.破裂の形式は仮性嚢胞内,消化管内,膵実質内と腹腔内または後腹膜腔内があるが,重篤な合併症である.vital signsが不安定なら手術の適応だが,安定しているなら血管造影・TAEを選択すべき.最近の14文献の集計で,死亡率は手術例で18.5%で,血管造影・TAE例では7.4%である
  【参照症例】   1. その他(Miscellaneous)シリーズ6 【症例 MR 30】

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