文献考察:重症急性膵炎
【重症急性膵炎の治療戦略】 重症急性膵炎とはどのような疾患か
Author:小川道雄(熊本大学 第2外科)
Source:救急医学(0385-8162)26巻7号 Page745-750(2002.07) 要旨:過去の死亡率の推移(表1),重症急性膵炎患者の死因(表2),重症急性膵炎には2つの病型がある(図):第一は全身・電撃進行型(systemic/fulminant type)である.発症早期に全身の重要臓器の機能不全を伴い,予後はきわめて不良である.現在の急性膵炎の重症度判定基準では,入院時すでに最重症と判定される例が多い.発症のごく初期から臓器不全を発症する例もあるが,急性膵炎の発症後に感染を併発すると,それがsecond attackとなって,急速に多臓器不全に進展するものもある.第二は局所・持続進展型(local/progressive type)で,膵臓およびその周囲の炎症や感染が長期にわたって持続し,進行するが,膵臓以外の重要臓器の機能不全にはなかなか進展しないものである.したがって現在の重症度判定法では重症急性膵炎でも比較的軽い方に分類されてしまう.この型の重症急性膵炎は局所療法で対処するが,しばしば治療に難渋する.長期にわたり膵局所の炎症が持続し,その間は易感染性である.一度感染するとそれがきわめて難治のため,臓器不全が進行し死に至る.
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