上腹部痛(Epigastric Pain)シリーズ11 EXPERT COURSE 解答 【症例 EE 55】

膵体部壊死.Necrosis of pancreatic body



脾臓と比較すれば全体的に造影効果は弱いが,尾部,体部の一部と頭部の△の部分は膵組織と認識できる.しかし,図1と図2の▲の部分は膵組織が均一に低濃度になっていることに注目し壊死を疑うべきである.図4と図5の↑は総胆管結石で,胆石膵炎である.図3でIVCが虚脱しており,強い脱水状態である.




下段は48時間後のCT.体部の▲の部分の壊死所見が明白になってきたが,背部の一部(△)はviableである.ENBD(Endoscopic Naso-Biliary Drainage:内視鏡的経鼻胆道ドレナージ)が施行されている.





14日目のCTでは壊死部とviableな膵組織がより明白となる.結局体部の前側大部分が壊死に陥り(▲),背側一部はviable(△)との結論となった.多臓器不全のため3週間で死亡した.





参考症例(アルコール性急性膵炎・体部壊死):26歳男性.▲の部分は血流の減少した壊死部と解釈する.重症化したが動注療法で治癒した.最下段の5週間後のCTでは,同部位が萎縮しており(白矢印),5週間前の壊死所見を裏付ける.










文献考察:重症急性膵炎
【重症急性膵炎の治療戦略】 重症急性膵炎とはどのような疾患か
  Author:小川道雄(熊本大学 第2外科)
  Source:救急医学(0385-8162)26巻7号 Page745-750(2002.07)
要旨:過去の死亡率の推移(表1),重症急性膵炎患者の死因(表2),重症急性膵炎には2つの病型がある(図):第一は全身・電撃進行型(systemic/fulminant type)である.発症早期に全身の重要臓器の機能不全を伴い,予後はきわめて不良である.現在の急性膵炎の重症度判定基準では,入院時すでに最重症と判定される例が多い.発症のごく初期から臓器不全を発症する例もあるが,急性膵炎の発症後に感染を併発すると,それがsecond attackとなって,急速に多臓器不全に進展するものもある.第二は局所・持続進展型(local/progressive type)で,膵臓およびその周囲の炎症や感染が長期にわたって持続し,進行するが,膵臓以外の重要臓器の機能不全にはなかなか進展しないものである.したがって現在の重症度判定法では重症急性膵炎でも比較的軽い方に分類されてしまう.この型の重症急性膵炎は局所療法で対処するが,しばしば治療に難渋する.長期にわたり膵局所の炎症が持続し,その間は易感染性である.一度感染するとそれがきわめて難治のため,臓器不全が進行し死に至る.

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